未経験でも受講可能なAIエンジニア育成プログラム
さて、このような状況にあるPythonですが、今後AIにおいて需要が高まるのではないかと考えています。ある調査ではビッグデータの2022年の国内市場規模は1兆5617億円という推測が出ていますが、別な調査ではAIの市場規模は2030年 に86兆9620億円と言われています。本来違う調査結果を比較してはいけないのですが、その差はかなりあります。
AI市場の規模に相当する86兆9620億円を一言で言えば、コンピュータが導入されている大半の市場においてAIが採用されているようなイメージになります(参考までにお伝えすると、2018年の国内IT市場の規模の予想は約18兆円です)。
このように拡大が予想されているAI市場において、すでに人材不足が懸念されています。こうした市場を踏まえ、Python試験の認定スクールである京セラグループ「KCCSキャリアテック」は未経験者を採用し(つまり、給料がもらえる)、AIエンジニアを育成するプログラム「キャリテク!」を実施しています。
KCCSキャリアテック人材採用部 東日本採用課 課長の塩原雅史氏は「キャリテク!は、経験の少ない第二新卒や新卒時の就活でうまく行かずにドロップアウトしてしまった若者が活躍できる場を作りたいという思いで始めたプロジェクトです。それゆえ、応募資格も学歴や資格などは不問で、『エンジニアとしてやっていきたいという覚悟』があることが応募資格でます」と「キャリテク!」を開始した背景を述べています。
ちなみに、未経験者をターゲットとした教育コースは高額なものが多いです。未経験者の若者は高額な学費を支払うことも難しいので、「キャリテク! 」のようにお金も経験もなくても、最後までやりきる覚悟があれば、道が開けるような取り組みというのは貴重だと思います。
AIエンジニアに求められる資質
ここで、「キャリテク!」の卒業生Tさんの声を紹介しましょう。未経験からAIエンジニアを目指す人の参考になると思います。
Tさんは大学卒業後、病院に就職し、事務職員として院内の物品購入を担当されていたそうです。事務作業などでパソコンを使って仕事をしていたものの、PCの経験はWordやExcelなどのOfficeソフトを使用する程度で、プログミング経験はゼロだったそうです。
「キャリテク!の研修は、学ぶ時は真剣に、楽しむ時はとことん楽しくとメリハリのある研修でした。わからないこと、知りたいことは先生から納得するまでとことん教えていただきました」
キャリテク!の久保講師もプログラミング経験ゼロから始めたので、「わからないことを先延ばしすることがよくない」と語っています。研修ではPythonに限らず、システム全般の知識も学べたので、実際にエンジニアとして働く上で必要な知識を叩き込まれた感じだったそうです。3カ月の研修ののち、大手通信会社で携帯電話の基地局から送られてくるさまざまなデータを、ユーザーの要望に合うように加工して出力するための社内システムに携わっているそうです。
久保講師に未経験でもAIエンジニアとして成功しやすい方の資質や気質などもヒアリングしましたので、紹介しましょう。
「AIに限らずですが、エンジニアは常に新しい技術やトレンドに興味を持っている必要があると思います。そうした意味では、AIはこれからの分野であり、トレンドも移り変わる可能性があります。そのため、他の技術と比較しても、新しい技術を取り入れる力が重要になってくると思います。柔軟な思考を持って視野を広く考えられる人はもちろんですが、自ら進んで疑問点を調べられる人は強いと思います。まずはAIをはじめ技術のトレンドを面白いと感じて興味を持つだけでも、成功につながると考えています」
今話題の「自走力」が成功の秘訣ということですね。どんな時でもそうだと思いますが、わからないことがあったり、壁に当たったりした時に、自分で何とかしようと調べたり、聞いたりすることができる人材が強いです。
例えば、会社で先輩に質問をしようとした時、先輩が忙しくて聞きにくいこともがあるかもしれません。しかし、「質問する時はメモをもって聞いた情報を身にできる」「同じことを2度聞かない」「調べてから質問する」といったことを徹底すれば、先輩も快く話を聞いてくれるかもしれません。先輩も人間です。忙しい時間を割いて教えてもいいかなと思えるレベルになれるよう、心がけたいものです。