ドローンといえば、いまやプロ・アマを問わず、映像や写真に関わる人にとって見逃せないアイテムとなりました。これまで撮れなかったアングルからの撮影が個人でもできるようになり、映像や写真の表現を大きく変えてくれるからです。

一般ユーザーをターゲットとした民生用ドローンは、中国DJIの製品が高い評価を受けています。なかでも、8月に販売を開始した「Mavic 2 Pro」「Mavic 2 Zoom」兄弟は、デザイン性に優れるスリムボディに高画質カメラを搭載しつつ、飛行の安定性を高めたことが評価され、実売価格は税込み16万~19万円前後と高価格ながら高い人気を集めています。

  • スリムで精かんなボディに1インチセンサー搭載カメラを備える「Mavic 2 Pro」(写真)。光学ズームを搭載した兄弟モデル「Mavic 2 Zoom」とともに、趣味&空撮向けドローンの決定版との呼び声も高い。2機種の実力を早速チェックしていこう

空が澄んでドローンでの空撮に向く冬を迎えたこともありますので、写真ファンなら注目したいMavic 2シリーズの実力を実機で改めてチェックしていきたいと思います。

「Mavic 2 Pro」で撮影した4K動画。このようなダイナミックな空撮が個人でも手軽にできるのが、最新ドローンの魅力だ

見た目も性能もしびれるMavic 2シリーズ

まず、DJIの民生用ドローンのラインアップをおさらいしておきましょう。現在は、大きく4つのモデル(シリーズ)に分けられます。エントリークラスの「Spark」、小型ながら4K動画の撮影に対応した「Mavic Air」、ミドルレンジクラスとなる「Mavic」シリーズ、民生用ドローンのトップエンドで安定した飛行が楽しめる「Phantom」シリーズです。

  • エントリーモデルの「Spark」(実売価格は税込み49,800円前後)

  • 4K画質の動画撮影が可能な「Mavic Air」(実売価格は税込み91,800円前後)

  • 高性能ドローンの代名詞ともなった「Phantom 4 Pro V2.0」(実売価格は税込み204,000円前後)

現在、もっとも人気があるのがMavicシリーズで、今回ピックアップするMavic 2 Pro(以下、Pro)とMavic 2 Zoom(以下、Zoom)はその最新モデルにあたります。

  • 光学ズームを搭載した「Mavic 2 Zoom」(左手前、実売価格は税込み162,000円前後)と、1インチセンサーを搭載するカメラを装備する「Mavic 2 Pro」(右奥、実売価格は税込み194,000円前後)

ProとZoomで共通の特徴として、アームの折りたたみが可能なコンパクトボディ、全方向の障害物検知システム、ロングライフのバッテリー、低ノイズ設計などが挙げられます。

ボディは、先代の「Mavic Pro」シリーズに準じた都会的なシェイプのデザインで、所有感をそそられます。アームが折りたたみ式になっているのも、先代の特徴を受け継いでいます。アームを広げると、民生用のドローンとしては大きい部類に入りますが、折りたたむととてもコンパクトになります。プロペラも折りたたみ式になっていて、ちょっとしたカメラバッグならすっぽり収まります。ちなみに、機体を無線でコントロールするためのプロポも、かなりコンパクトに仕上がっています。

  • 都会的なデザインを採用するMavic 2シリーズ。アームは折りたたみできる

  • アームを広げたところと、アームを折りたたんだところ。アームを広げた状態では民生用ドローンとしては大きい部類に入るほどだが、折りたたむとコンパクトに。旅行などに携行してもさほど苦になるようなことはない

  • アームとプロペラを折りたたむと、こんなにコンパクトになる

機能的なトピックとしては、前後、左右、そして上下の全方向障害物検知システムを搭載していることが挙げられます。このシステムが備わっていることで、どの方向を向いて飛行していても、進行方向に障害物を検知すると進むのを停止してホバリングするか、障害物を避けて飛行します。

  • 機体底部の様子。左下からポジショニングセンサー、LEDライト、下方向の障害物検出センサー(赤外線センサー)、ポジショニングセンサーとなる

  • 機体前面の両脇にある丸いレンズのようなものが前方向の障害物検出センサーだ

  • 左側の丸いレンズのようなものが左右(この場合左側)の障害物検出センサー、その右にあるのは後方の障害物検出センサー、その上の楕円形が上方向の障害物検出センサー(赤外線センサー)となる

DJIのドローンが多くのユーザーから支持されている理由のひとつに、安全なフライトの要となる障害物センサーを要所に配置していることがありますが、Mavic 2シリーズの装備の充実ぶりは特筆すべきといえます。DJI以外のメーカーを含め、これまで民生用ドローンで上方向の障害物センサーを搭載した機種はなく、より安全に飛ばせるようになることはいうまでもありません。

バッテリーの持ちが向上していることも見逃せないところです。フル充電の場合、最大飛行時間は約31分(従来モデルは約27分)と若干延びました。実際は、飛行の方法や風などの状況によって飛行時間は変わってきますし、バッテリー残量が30%になるとアラートが鳴って落ち着いてフライトできなくなるので、現実的には20分ほどの飛行時間と考えてよいでしょう。それでも、従来モデルよりも長い時間飛ばせるのはうれしいポイントといえます。

  • 付属のプロポ。Mavic Airのプロポと同様に、コントロールスティックは取り外してプロポ本体に収納できる。スマートフォンやタブレットとはケーブルで接続する

  • iPhoneを装着したプロポを持ったところ。コンパクトなので手が疲れるようなことがない。ストラップが取り付けられないのは残念

さらに、低ノイズプロペラの採用もトピックといえます。ドローンは、プロペラ音が思いのほか耳障りなので、これはありがたい進化だといえます。また、8GBのストレージを機体に内蔵しているところもうれしく思えます。4K動画撮影ではわずかな時間しか記録できませんが、フルHD動画や静止画であればワンフライト程度の記録ができそうです。

両機種ともそれぞれ特徴のあるカメラを搭載

ProとZoomで異なるのがカメラです。

Proは、1インチのCMOSセンサー(2000万画素)を採用しているのが大きな特徴です。スマートフォンのものよりもはるかに大きく、一般的なコンパクトカメラが採用する1/2.3インチセンサーと比べても約4倍もの面積を持ちます。さらに、搭載するレンズは35mm判換算で28mm相当の単焦点レンズを搭載します。解像感やコントラストが高く、こちらも画質的に有利です。描写の精細感や階調表現に期待できる作りといえます。

  • Mavic 2 Proのカメラ部。2000万画素の1インチCMOSセンサーと、35mm判換算で28mm相当の単焦点レンズを搭載する。レンズ面には、DJIが傘下にしたハッセルブラッドのロゴが見える

Zoomは、1/2.3インチのイメージセンサー(1200万画素)を搭載。センサー自体は平凡ですが、こちらはレンズに特徴があり、35mm判換算で24~48mm相当までの光学2倍ズームレンズとなっています。変化のある描写が楽しめるだけでなく、ズーム機能を利用してユニークな表現が楽しめる「ドリーズーム」を搭載しているのが大きな特徴となっています。

  • Mavic 2 Zoomのカメラ部。1200万画素の1/2.3インチCMOSセンサーと、35mm判換算で24~8mm相当までの光学2倍ズームレンズを搭載する。Mavic 2 Proよりもカメラ部はコンパクトだ

Mavic 2シリーズの位置づけとしては、画質を追求するならPro、さまざまな表現を楽しみたいのであればZoom、といったところでしょうか。次回の後編では、その写りを中心に紹介していきたいと思います。

  • Mavic 2シリーズはランディングスキッドが低いため、プロペラが回転すると砂や埃を巻き上げやすい。そのため、離着陸地点に敷くランディングパッドは必需品だ