ニコンがフルサイズミラーレス「Nikon Z7」「Nikon Z6」をお披露目した8月23日、ドローンで世界トップシェアを誇る中国DJIが新しいドローン「Mavic 2 Pro」「Mavic 2 Zoom」を発表しました。

  • DJIが高性能ドローン「Mavic 2 Pro」「Mavic 2 Zoom」を発表。強化されたカメラ機能や撮影機能の実力を、いち早く実機で確認してみた

Mavicは、DJIの個人向けドローンでPhantomに次ぐミドルレンジのシリーズですが、アームを折りたたむことでコンパクトに持ち運びできることや、シャープで美しいデザイン、比較的こなれた価格帯であることなどが好まれ、個人向けドローンでは一番人気となっています。

今回のリニューアルでは、性格の異なるカメラを懸架した2モデルが登場したことや、ドリーズームなど新趣向の撮影機能を搭載した点が注目されます。実機を使い、新しいMavic 2がもたらす驚きを検証してみました。

Mavicに1インチセンサーや光学ズームがやってきた

Mavic 2シリーズは、1インチセンサーに単焦点レンズを搭載するMavic 2 Proと、1/2.3インチセンサーながら民生用ドローンは初となる光学2倍ズームレンズを搭載するMavic 2 Zoomの2機種で構成されます。それぞれ、本体サイズは先代のMavic Proとほぼ同じ水準に据え置いています。

  • 1インチセンサーと単焦点レンズを搭載する「Mavic 2 Pro」。実売価格は189,000円(税込)

  • 1/2.3インチセンサーと光学2倍ズームレンズを搭載する「Mavic 2 Zoom」。Mavic 2 Proとは前面のカメラが異なるのが分かる。実売価格は162,000円(税込)

従来のMavic Proは「センサーサイズを大きくして高画質化を図ってほしい」というユーザーからの要望が多く、1インチセンサーを搭載したMavic 2 Proはその期待にズバリ応えたものになりました。私自身も、1インチセンサーのカメラを搭載する「Phantom 4 Pro」を所有していますが、このカメラがよりコンパクトなMavicシリーズに搭載されないかな……と思っていただけに、うれしい発表となりました。

Mavic 2 Proのカメラは有効2,000万画素。動画撮影は4K/30p、ビットレートは100Mbps、H.265コーデックに対応しており、ドローンのカメラ機能としては申し分ありません。35mm判換算で28mm相当となる単焦点レンズは、2017年に傘下に収めたハッセルブラッドのロゴが刻まれており、マニア心をくすぐります。さらに、10-bit Dlog-Mカラープロファイルの搭載や、10-bit HDR動画撮影にも対応しており、映画や放送の領域での利用も意識した仕上がりになっています。DJI直販サイトでの価格は、バッテリーなどを含む基本セットで189,000円(税込)です。

  • 「HASSELBLAD」のロゴが輝くMavic 2 Proのカメラ。有効2,000万画素の1インチセンサーと、35mm判換算で28mm相当の単焦点レンズを組み合わせる

Mavic 2 Zoomは、センサーこそ先代と同じ有効1,200万画素の1/2.3インチセンサーですが、注目なのがレンズ。35mm判換算で24~48mm相当の光学2倍ズームで、フルHD動画撮影の場合は画質劣化のない2倍のデジタルズームが可能なので、合わせて4倍ズームでの撮影が可能です。絞り機能は先代と同様に搭載しておらず、絞りはワイド端がF2.8、テレ端がF3.8で固定となります。動画機能は、Mavic 2 Proと同様に4K/30p、ビットレートは100Mbps、H.265コーデックに対応。写真撮影は4,800万画素相当の超高解像度撮影もできます。DJI直販サイトでの価格は、バッテリーなどを含む基本セットで162,000円(税込)です。

  • Mavic 2 Zoomのカメラ。有効1,200万画素の1/2.3インチセンサーと35mm判換算で24~48mm相当の光学2倍ズームレンズを組み合わせる

それぞれのカメラは、3軸のジンバル(防振機構)を介して前面部に懸架されます。3軸ジンバルは、これまでの同社の培った技術が凝縮されており、画像の安定性に大きく寄与しています。実際、急な動きをしても撮影した動画は安定しており、ジンバルがしっかりと機能していることがよく分かりました。

ドリーズームなどユニークな撮影機能を追加

Mavic 2シリーズは、カメラを高性能なものに置き換えただけではなく、通常は高度なテクニックや高価な機材を要する特殊な撮影をワンタッチでできるようにしたのも見逃せないポイントといえます。

その1つが、光学ズームを備えたMavic 2 Zoomのみに与えられた「ドリーズーム」。これは、カメラを少しずつ引きながら、中心の被写体の大きさが変わらないようにズームアップしていく動画撮影テクニックです。遠近感の違いから、背景が迫ってくるように見える不思議な表現が楽しめるのが特徴。4K画質での撮影はできず、フルHDのみの対応となりますが、ヒッチコックの映画のような独特の写りが手軽に楽しめるのが必見です。ドリーズームは、単焦点のMavic 2 Proでは対応していないのが唯一残念なポイントといえます。

Mavic 2 Zoomの「ドリーズーム」で撮影した動画。人物の大きさはほとんど変わらないのに、背景が手前に迫ってくるような不思議な表現になる

人物などの被写体を自動で追尾するアクティブトラックは、Mavic 2シリーズでアクティブトラック2.0に進化。被写体の動きを予測できるようになり、被写体が画面から大きく外れてしまうことが少なくなりました。

「アクティブトラック2.0」で人物を追尾しながら撮影しているところ。カメラの向きに気を取られず、ドローンの操縦にだけ気を配ればよいのが便利だ

ドローンが少しずつ動きながら撮影した静止画を1本の動画にするハイパーラプスを搭載したこともトピックといえます。

安全性や飛行時間も向上

Mavic 2は、ボディの全方向に障害物センサーを配置したのも注目点といえます。特に、上方向のセンサーは上位シリーズのPhantom 4 Proにもない仕様で、これまで以上に安心してフライトが楽しめるようになります。実際にフライトさせてもきわめて安定しており、空中での静止も風の影響を受けて挙動が不安定になるようなことはありませんでした。

  • Mavic 2は、箱形ボディのすべての面に障害物センサーを搭載。上部には、楕円形の窓の内部に赤外線センサーを新たに搭載した

さらに、バッテリーの持ちがよくなったのもMavic 2シリーズの見逃せない特徴といえます。メーカーの公称値だと最大飛行時間は31分を誇り、個人向けドローンでは最長飛行時間とのことです(従来モデルは27分)。実際は、残容量が30%になるとアラートが鳴り始めるので、おおむね20分ほどのフライトが楽しめると考えればよいでしょう。それでも、従来より長い時間飛ばせるのはありがたいところ。低ノイズ化が図られたプロペラの採用や、機体に8GBのストレージを内蔵した点も目新しいところです。

  • バッテリーの飛行時間が長くなったのもポイント。手持ちのスマホを挟み込んで使う送信機も標準で付属する

個人向けドローンの決定版となるか

Mavic 2 ProとMavic 2 Zoom、どちらを選ぶか悩んでいる人も多いことでしょう。今回、DJIの担当者からいろいろ話を聞いたうえで、実際に両機種でフライトを体験しましたが、やはり写り(画質)をとことん追求するならばMavic 2 Pro、光学ズームやドリーズームなど多彩な機能で撮影を楽しみたいならばMavic 2 Zoomがおすすめといえます。1インチセンサーではないMavic 2 Zoomでも描写に不足は感じず、どちらも個人向けドローンの決定版として手堅くまとまったドローンだと感じました。

ドローンを取り扱うショップなどでは、無料のフライト体験会を開催するところもあります。ぜひ一度触って飛ばしてみるのも悪くないかと思います。

  • カメラ性能を筆頭に、機能や安全性も高まったMavic 2。空飛ぶカメラとしての魅力が増した