洗練されたオフィスデザイン、オープンで刺激的な空間、入居者同士のコミュニティ活性化する様々な仕掛・・・。そんな計算され尽くしたオフィス環境を提供するのが、コミュニティ型コワーキングスペース「WeWork」だ。人との繋がりやオープンイノベーションに重きをおくWeWorkだが、果たして本当にWeWork内での事業創造や人脈形成が生まれているのだろうか。2018年2月の日本初上陸から早9カ月。すでに東京都内に加えみなとみらい、さらに大阪、福岡のオープンを控え、勢いを増すWeWorkのリアルな実態に迫る。

「WeWork」でコラボレーションが生まれる理由

まず話を聞いたのがWebを中心としたクリエイティブ領域全般の制作を手掛ける 株式会社リムズキャピタルのグループ会社でLucyの石野田氏。2018年7月の入居以降、様々な出会いがあったと話す。

リムズキャピタルグループ 株式会社Lucy 取締役・CMO/プランナー 石野田紋氏

「すでに5、6社とコラボレーションが進んでいます。その中でも、Web制作の観点で親和性が高いVRの制作会社へはWeWorkのSNSを使ってメッセージを出し、その日中に、オープンスペースで打ち合わせを行いました。その企業とは打ち合わせを数回重ね、両社のサービスを融合させた新たなサービスの創造にまで至っています。近日中に、そのサービスを持ってお客様へ提案を行う予定です」(石野田氏)

通常のビジネスで生まれるコミュニケーションの何倍もの速さで話が進んでいく。このスピードこそWeWorkの価値だと石野田氏は続ける。

「WeWorkに入居している時点で近い価値観を持っていると感じられるため、普段とまずコミュニケーションのスタート地点が違う。話の進むペースが早い上に、物理的にも同じオフィスに居ることから、とにかく話が早い。それに夜はお酒を飲みながら、深い話もできるので、短期間に密度の濃い付き合いが生まれています」(石野田氏)

同社は竹橋にオフィスがあるが、親会社であるリムズキャピタルの代表から、WeWorkの視察を案内されたことをきっかけに入居の検討を始めた。従来のオフィスで不自由なく業務はできていたが、事業の幅を広げ、よりクリエイティブな仕事を生み出すために、WeWorkへの入居を決めた。

「話題になっていたので、WeWorkの販売代理店であるソフトバンクから紹介を受ける前に知ってはいました。実際に視察しお洒落なオフィスや充実したファシリティに魅力を感じると同時に、イベントや専用のSNSを通じて多くの出会いを生み出せるだろうと期待が高まりました。今こうした価値を提供できるのはWeWork唯一無二だと思い、他のシェアオフィスと比較することなく入居を決めました。単なるオフィスではなく新たなビジネス創出のために必要なインフラだと捉えているので、決して利用料も高額だとは思っていません」(石野田氏)

自然と生まれる入居者同士のコミュニケーション

同社のクリエイティブディレクター木村氏もWeWorkの魅力をこう話す。

リムズキャピタルグループ 株式会社Lucy 木村賢太郎氏

「WeWork丸の内は、場所柄大手金融企業の一部門や地方企業がサテライトオフィスとして利用されるケースが多く、今までのオフィスにいては絶対に交わることのなかった人々との出会いが生まれています。オープンスペースやイベントで気軽にコミュニケーションがとれるので、自分と全く違う畑の人の話を聞けるのは新鮮ですし、刺激にもなります。また意識の高い人が多いので、そうした人と会話することで、自分のモチベーションも自然と高まっています」(木村氏)

自分たちが持っていない考えに触れることで、今後のビジネスの広がりを感じられていると話す木村氏。実際にWeWork内のイベントで意気投合したクオカード様とは定期的に情報交換を行っている。1社と出会うことで、その周辺企業の方や人々とも一気に出会えるといい、必死に名刺集めをすることなく、人脈が自然に広がっているそうだ。

  • オープンスペースにてクオカード瀧上氏と打ち合わせ

その他にも、同社がプロモーション担当するある製品の認知促進として、WeWork内でイベントも開催した。開催前SNS上に告知をすると、すぐに他の入居者から反応があり、製品の認知促進だけでなく、そこからまた新たな出会いが生まれた。

「弊社がプロモーションを行う奄美徳之島の健康食品をPRするために、WeWorkで試飲会を開催しました。SNSで告知をすると、すぐさまアイスバーグに入居する弁護士の方から連絡を貰いました。その方は結果的にイベントには参加できなかったのですが、個別で連絡を取り合うようになり、今幾つかビジネスの相談もしています」(石野田氏)

  • SNS上でイベントの告知を実施。多くの反響を得られた

WeWorkのキーワードである「コミュニティ」を最大限に活用し、早速幾つかの成功体験も得られたLucy 。同社がWeWorkの王道である体験をしている一方で、コミュニティや内装以外でWeWorkの価値を見出せたと話す企業もある。そう話すのは、RPAの受託開発を行うRPANEXTの小林氏だ。