筐体部分では、軽量素材であるマグネシウムリチウム合金の採用が鍵になった。従来モデルでは、天板(Aカバー)だけにマグネシウムリチウム合金を採用していたが、今回のUH-X/C3では、キーボード面のCカバー、底面のDカバーにもマグネシウムリチウム合金を採用した。液晶ディスプレイ面のBカバーだけは樹脂のままとした。

マグネシウムリチウム合金は、強度が高く、軽量化を実現できるが、その一方で、静電気耐性や電波特性に課題があり、ノイズが発生しやすいこと、加工の柔軟性に制限があること、コストが高いといったデメリットがある。そのため、従来の製品では、3つのカバーにこの素材を採用することは難しかった。

だが、今回はいくつかの工夫によって、これを解決した。

デザインを素材の特性から逆算

ひとつは、回路のレイアウトを徹底的にシミュレーション。基板に特別なシールドを施すことなく、ノイズの発生を抑えることができた点だ。

また、加工性の課題解決については、デザイン部門との連携によって、先に素材の特性をもとにして、最も強度を確保でき、それでいて加工しやすい形状を先に決定。それをもとにデザインを行うという、通常とは逆のアプローチをとった。底面が箱型の形状としたのはそのためだ。これにより、Aカバー、Cカバーは、鍛造切削で成形しているが、底面のDカバーだけはプレスで成形。これが、成形の課題とコストダウンにつながっている。

  • 箱型の形状としたのはマグネシウムリチウム合金のプレス加工を優先したため(写真はUH-Xと同じ形のUH75/C3ガーネットレッド)

  • 従来モデルは底面カバーとつながる形状だった

基板の小型化で5gを削る

2つめは、基板の小型化である。基板を再設計し、15%の小型化を実現。これも軽量化に貢献している。

  • 基板も新たに設計。15%の小型化を図った

「従来モデルでは、工場でのBTOに柔軟に対応できるような設計にしていたが、メモリをオンボードにしたり、搭載する部品の種類や調達先を絞り込むことで管理手番を削減したりといった工夫も行っている。とくに、メモリをオンボード化することでスロットを不要にでき、そのスペースを削減することができたのは大きかった」(河野マネージャー)という。

だが、新たなコネクタの採用などによって、面積では15%削減したものの、重量では15%までの削減効果は出ていない。それでも、5gほどの軽量化を達成したという。

筐体部分が削減効果の60%を占めるのに対して、液晶およびキーボードでは、35%程度の削減効果をもたらしたという。

軽い液晶パネルをシャープと開発、省電力効果も

ここで苦労したのが液晶パネルだ。FCCLでは、従来モデルから、シャープのIGZOディスプレイを使用しているが、今回のUH-Xでは、開発段階からシャープと共同で作業を開始。UH-Xにカスタム化した液晶を初めて採用している。ここでは、UH-Xの生産拠点である島根富士通に、シャープの技術者が訪れて、生産工程におけるアドバイスを得て、オペレーションの見直しを行うというところまで踏み込んでいる。

「ガラスの薄型化とともに、光学系内蔵シートも軽量化を図ることができた。これにより、12~13gの軽量化が実現できた」(河野マネージャー)という。

実は、UH-Xのために新たに開発した液晶ディスプレイは、別の効果も生んでいる。それは、省電力化に大きく貢献するという効果だ。従来モデルでは、8.3時間だったバッテリ駆動時間は、11.5時間まで伸びているが、バッテリ容量を増やさずにここまで長時間駆動を可能としたのは、液晶ディスプレイの省電力効果が大きく影響しているからだ。

一方で、キーボードの下に敷かれる板金にも、シミュレーションをもとに最適な場所穴をあけて、少しずつ軽量化を進めたほか、メンブレンも薄型化。それでいて、1.5mmのキーストロークを維持しながら、キーを押下げた時のオン位置を手前に改良することで応答性を高め、よりスムーズな入力を可能にしたという。

  • これまでより場所穴を多くあけたキーボード下の板金

ちなみに、クリックボタンにも改良を加えている。新たにパンタグラフ方式を採用したクリックボタンとしたことで、端を押した場合でも強くクリックすることなく入力ができるようになった。

使い勝手は軽さとのトレードオフ

こうした軽量化の取り組みを徹底する一方、軽量化とは相反することにも取り組んでいる。それは、使い勝手をさらに進化させるというFCCLのこだわりでもあった。