モデルの鈴木えみ氏がデザインするオリジナル服飾ブランド「Lautashi(ラウタシー)」は10月18日、「Amazon Fashion Week TOKYO」のスペシャルプログラム”AT TOKYO”にて、2019年初夏コレクションをインスタレーション形式(作品の展示方法の1つ)で発表した。

メディアアーティストの落合陽一氏が演出を担当することで注目を集めたこのイベント。開催に先立って行われたインタビューで落合氏は、「[『光』にフォーカスした演出を行います。”日本らしいものは出てこないけど、なぜか日本を感じてしまう”演出に注目して欲しい](https://news.mynavi.jp/article/20181012-879365/)」と話していた。

その発言の意味するところを実感してみようと、会場を実際に取材することにした。

東京の日常の中の”服”を演出したい

イベント会場に入ると、暗闇の中にLautashiの新作に身を包んだモデル達が後ろを向いて立っていた。

「工業社会っぽいが、それが自然に溶け込んできている風景」を演出に組み込んだという落合氏。独特の光を用いた演出に加え、会場そのものの選択にもこだわったようだ

インスタレーションが始まると、モデルが振り返り、”東京の日常に溢れる音”をイメージしたという、騒がしく、どこか聞き慣れた音が鳴り始める。その後、天井や壁、モデルの合間に設置されたいくつものLED照明がさまざまに光り出す。そして、その色を青、赤、灰色と複雑に変化させ、照らす服の印象を次々に変えていく。

光の変化で、服の見え方も変わってくる
インスタレーションが始まり数分経つと、「是非自由に見て回ってください」との場内アナウンスが。モデルの間を自由に歩き回り、服を間近で見ることができた

僕らの日常とは、松屋やセブンイレブンの光

今回のインスタレーションを終え、鈴木、落合の両氏は以下のように語る。

「ファッションショーや雑誌って、服を完璧な照明や状態で見せることが多いんです。でも、日常にはさまざまな光が溢れています。今回のように、服をいくつもの照明条件で見せることで、”日常感”を感じさせられるような演出にしました。来場者が期待以上にモデルに近づいてくれて良かったです」(鈴木氏)

「光の演出には、日常に溢れるさまざまな光景を使っています。例えば、松屋やセブンイレブン、車のヘッドライトなどをあえてぼかして撮影して、(その画像をLEDで映し光源とすることで、街の光を再現した)照明に使っているんです。それらは普段、意識しないと目にも止めないようなものですが、そういうものから出る光が、たとえ人工的であっても、現代においては”自然”な存在となっています。私たちは普段、そういう照明条件で服を着ますよね」(落合氏)

左から、アマゾンジャパン バイスプレジデント ファッション事業部門 統括事業本部長のジェームズ・ピーターズ氏、メディアアーティストの落合陽一氏、モデル・デザイナーの鈴木えみ氏、サウンドアーティストのKAITO SAKUMA a.k.a BATIC氏

イベントの音楽を担当したサウンドアーティストのKAITO SAKUMA a.k.a BATIC氏は、街でサンプリングした音と会場での音を組み合わせることで、こちらも「どこか日本らしい」音楽でインスタレーションを彩っている。

Amazon Fashionを擁するアマゾンからは、日本でバイスプレジデントを務めるジェームズ・ピーターズ氏が来場。「消費者と非常に近い距離で服を見せられる。非常に素晴らしい演出だった」と、感銘を受けたことを語っていた。

落合氏の「なぜか日本を感じてしまう演出」という言葉通り、ありふれているようで、これまでにない体験を得られるインスタレーションとなったのではないだろうか。

(田中省伍)