ヴァイナスは10月9日~11日にかけて、都内でプライベートカンファレンス「VINAS Users Conference 2018」を開催。同カンファレンスのオープニングとして、同社代表取締役社長の藤川泰彦氏が登壇。今後の同社のサービス内容についての説明を行った。

  • 藤川泰彦氏

    VINAS Users Conference 2018にてオープニングスピーチを行ったヴァイナス代表取締役社長の藤川泰彦氏

最適化設計のニーズが増すCFD解析

まず同氏は、CFDを取り巻く環境について、「CFD解析データの計算データサイズは年々増加しており、これをデータサイズの毎年4倍法則と言ってきた。また、2013年からはケース数の増加傾向が見えてきて、現状では、この先、どこまで増加していくのか分からないくらいの勢いを見せるようになってきた。ポスト京の重点課題などといった最先端の研究も加味すると、今後はさらにデータサイズは増える」と説明。最適設計が設計部門のみならず、研究部門にも普及して、さまざまな課題への対応が図られつつあることが、こうした動きの背景に存在しているとした。

  • CFD解析データのサイズの増加傾向

    CFD解析データのデータサイズは年々増加を続けてきた。また、近年はケース数も増加傾向となっている (出典:本レポートのスライド画像はすべてVINAS Users Conference 2018における藤川氏の発表資料を撮影したもの)

また、「高精度な計算ニーズが増すごとに、最適化設計も増え、計算コア数がケース数の増加に併せて増加していく流れの中、計算機の資源確保が1つの重要な鍵となるほか、最適化設計を進めていくと、さまざまなシステムコンポーネントをネットワーク含めて構築していく必要があり、その運用の難しさであったり、アルゴリズムの評価といった課題もでてきている」と、高精度、最適設計、大規模解析の流れで生じる課題を説明。中でも、最大の課題がアプリケーションやソフトウェアのライセンス料が増加していくことであると強調。その解決策の1つがオープンソースの活用であるとする。

「10年前、オープンソースを使おうと思えば、コンパイルの実行までたどり着けないとか、GUIがないとか、精度や速度がでないといった問題があったが、昨今は状況が変化。オープンソースをベースに、商品化が進み、サポート体制も構築されるようになってきた」と、Linuxの商用利用を例に取り、解析分野においても、オープンソースを活用を進める必要性がでてきたとする一方、「計算資源の確保で、社外の計算環境、いわゆるクラウドコンピュータに向かうのは良いが、そこでも問題は起こる。例えば、OSとしてはLinuxを用いるのが基本で、その知識があるという前提条件が存在するほか、それぞれの計算環境でのジョブスケジューラが異なっていたり、各ジョブの収束状況がどうなっているのかが見えなかったり、ましてや大規模になればなるほど、インタラクティブな可視化が難しくなっていったり、データ量が増えることから、転送にかかる時間が長くなるといったことが挙げられる」とし、ヴァイナスとして、今年度ならびに来年度に向け、最適化設計の効率化に向けたコスト発生要因の解決に向けた提案を行なっていきたいとした。

さらに、「CFD解析だと、ソルバに目が行きがちだが、ジョブの増加に伴う最適設計のアプリケーションコストの負担が大きくなってきた。最適化設計のコストをいかに下げていくのか。ヴァイナスとしては、オープンソースソフトウェアとクラウドのマッチングを活用していく必要があると考えており、そのために必要なエキスパートエンジニアのノウハウをシステムに組み込むといった取り組みを進めている」と、自社の取り組みを説明したほか、「ネットワーク環境で計算を実行すると、入力データ、計算データ、その途中のデータといったさまざまなデータが、ネットワーク上、社内の環境と散逸することが多い。これを一元管理して行こう、といった取り組みも進めている」ともし、そうしたすべてを盛り込んだ最適設計システムのためのフルターンキーソリューションの提供を目指したいとした。

  • フルターンキーの最適設計システム

    ヴァイナスが目指すフルターンキーの最適設計システムのイメージ

2018年中にさまざまな新サービスの提供を開始

このほか同氏は、前回のVINAS Users Conference 2017にて、その存在を明らかにした高速計算・オープンプラットフォーム・複雑データ可視化のための国内外の研究機関の成果をライセンスパッケージ化した「iDIOS v1」の提供を2018年12月より開始することを明らかにした。

  • iDIOS v1

    iDIOS v1の概要

また、クラウドコンピュータ利用支援システム「CCNV」も2018年12月までに「バージョン4(v4)」の提供をスタートする予定であるともし、CAEデータのオンライン自動バックアップを可能とする「CC-Drive」の機能強化として、10TBのデータ容量であっても24時間以内の転送を可能とする高速リストア機能の実装などを提供する計画であるとした。

  • CCNV v4の概要

    CCNV v4の概要

さらに、オープンソース利用のための総合サポートサービス「OPASS」を2018年10月よりトークン方式のサービスへと変更。各種のライセンスのみならず、さまざまなエンジニアリングサービスも契約後、1年間有効のトークンを活用することで、柔軟に提供を受けることが可能になるとしており、これによりオンデマンドで最適化サービスやメッシュ生成方法のアドバイス、大規模並列可視化など、必要なセグメントに分けて活用してもらえるようになるとする。

  • OPASSのトークンサービスの概要

    OPASSのトークンサービスの概要

なお、同氏は、「ゴールは計算コストの削減」と、自社の現在の目標を語り、CEAプロセスのすべてのプロセスでスパコンの活用が求められるようになってきている現在、オープンプラットフォームの活用によるコスト削減はもとより、ヴァイナスとしてもフルターンキーソリューションを提供することで、間違いなく、早く、簡単に安く実行できる環境の構築を目指していきたいと抱負を述べていた。

  • ヴァイナスのゴール

    ヴァイナスのゴールと、その実現に向けたソリューションの概要