ソニーは、プロのミュージシャンがステージで演奏している音を再現する“ステージモニター”というコンセプトの下に開発した、新しいイヤホン2機種をIFAで発表しました。ヨーロッパでの発売は未定ですが、北米とアジア各地域で発売が検討されています。日本の発売は未定です。

  • 欧州向けの発売についてアナウンスがなかったものの、アジアでの展開が予定されている“ステージモニター”「IER-M9」

音質・フィット感に機能的なデザインを融合

ソニーが今回発表したIER-Mシリーズは、いずれも耳型の採取は不要なユニバーサルフィットでありながら、高い遮音性能と安定したフィット感を実現したイヤホン。2機種とも、複数のBA型ドライバーで構成するマルチBAドライバーシステムを取り入れ、音域ごとに正確な再現性を持ち、かつ滑らかにつながる一体感あふれる音に仕上げています。

  • プレスカンファレンスの壇上ではソニーの次世代を担う注目商品として紹介されていました

音づくりは、ソニーグループの音楽エンターテインメント部門であるソニーミュージックの協力を得て、コンサートホールやライブ会場などの現場で活躍するPAエンジニアやアーティストの声を積極的に採り入れたとのこと。

一般的にプロフェッショナル用のイヤホンに必要な要素は、ステージで歌い、演奏するミュージシャンのパフォーマンスを高めるために「音を正確に返すこと」であるといわれていますが、ソニーのIER-Mシリーズはミュージシャンがステージの上で奏でている音色、各楽器間のバランスとリズムへの反応をより正確に再現しながら“グルーブ感”を引き出すことにも注力しています。

どちらのモデルも、搭載するBA型ドライバーはすべてソニー自社開発。プロダクトに落とし込む段階で、ドライバーの特性を細かくチューニングしながら、イメージした音に近づけられるところに、ソニーの底力があります。最終製品として組み上げる段階でも、全帯域のドライバーの音を合わせこみ、さらにバランスがフラットになるように緻密な調整が繰り返されてきました。

5基のBA型ドライバー。中低域、超高音域は新開発

上位モデルのIER-M9は、5基のBA型ドライバーを搭載。内訳は低域×1/中域×2/高域×1/超高域×1という5way構成です。中低域のドライバーは本シリーズのため新規に開発。高域のドライバーは同社のイヤホン「XBA-N3/N1」に搭載されたものと同じになります。

そしてもうひとつ、新規に開発された超高域用ドライバーには、マグネシウム振動板を採用。むやみな色づけのないクリアな音の源泉のひとつとしています。ボイスコイルに伝送比率が高い銀コート導線を採用して、端子部を金メッキ処理としたことで高い駆動力も確保しています。

弟機IER-M7のドライバー構成は4基・4way。低・中・高・超高域にそれぞれ1基ずつ搭載してます。

  • ハウジングの側面に、M9はカーボンプレートを配置。高級感を持たせています

高音域の損失を回避する設計

M9/M7ともに、インナーハウジングの素材には内部損失の高いマグネシウム合金を使って、各ドライバーユニットをしっかりと固定。ドライバーから出力される音は、音導管に至るまでの経路形状を最適化して、特に高音域の損失を回避しながら伝送できるように設計しています。音導管が狭いと高域の力が不足して全体のバランスが崩れがちになるため、開口部は広く取っています。

さらに上位のM9はノズルを含むハウジングのシャーシにもマグネシウムを採用。軽量かつ剛性の高いマグネシウムの特徴を活かして、ステージ上での音楽演奏などハードな使用シーンにも壊れない・傷つきにくい高い信頼性を実現しています。M7の筐体もタフな強化樹脂。音導管は真鍮素材を組み合わせています。ハウジングの側面にはM9がカーボンプレート、M7がアルミプレートを乗せて高級感を出しています。

ノズルから出力される音楽に、周囲の音が飛び込んでこないように遮音性も徹底的に高めています。ドライバーユニット前面の空間は完全密閉構造として、音ヌケ用の孔をケーブルの着脱にも対応したコネクターの部分に設けることで、クリアで切れ味豊かな音を再現します。

リケーブルもOK、基本は“ループ掛け”

交換可能なケーブルはイヤホン側端子が汎用性の高いMMCX。プレーヤー側は3.5mmステレオミニプラグと4.4mmバランス標準プラグとしています。導体は音響特性の高い純銀コートのOFC(無酸素銅)線。上位モデルのM9には非磁性体の金メッキプラグと、タッチノイズを軽減するためのシルク編組の被覆を採用しています。

装着スタイルは耳にかける“ループ掛け”が基本ですが、ソニーの従来のイヤホンよりもさらに装着感を安定させるために、耳掛けループのカーブ形状をある程度固定しながら、色々な耳の形に無理なく追従できるよう「プリフォームド」設計を新たに採用しています。装着してみると耳元でハネない自然なかかり具合がとても心地よく感じられました。

持ち運びの際にはイヤホンを外傷から守りながら、コンパクトに収納できる金属パネル採用の専用ケースが付属します。イヤーピースはそれぞれに素材・サイズが異なる13種類を同梱。独自開発のトリプルコンフォートイヤーピースは水洗いもできるので、汗をかくステージ上のパフォーマンスにもうってつけのプレーヤー待望のイヤホンと言えそうです。

  • 専用ケースに入れて紹介されていた弟機の「IER-M7」