ソースネクストの翻訳機「POCKETALK(ポケトーク)」がヒットしている。訪日外国人の増加を背景に、ホテルや飲食、空港などで相次いで採用されており、発表から1年でソースネクストの時価総額は約3.3倍に膨らんだという。

ソースネクストが翻訳機の新モデルを発表

7月26日には、新モデルとして「POCKETALK W(ポケトークW)」を発表した。わずか1年という短期間でモデルチェンジした狙いはどこにあるのか。

訪日需要に伴い、ソースネクストの時価総額も急増

ポケトークのような音声翻訳デバイスが注目される背景には、訪日外国人の増加がある。政府は2020年に4000万人、2030年には6000万人の訪日客を見込んでおり、さらに日本に在住する外国人も東京を中心に増えている。

実際、東京だけでなく地方の観光地でも訪日客の姿を見かける機会は増えている。先日、筆者が訪れた福岡では、中州や天神の屋台に多数の外国人が押し寄せていた。英語だけでなく、中国語や韓国語などへの多言語対応も必要となれば、翻訳機の需要が高くなるのも当然だ。

2017年10月に最初のポケトークを発表したソースネクストの時価総額は、179億円から今年の7月25日時点で585億円へと約3.3倍に増加した。法人の導入事例として、小田急百貨店では免税手続きにポケトークを活用。かんぽの宿では料理の説明に使うなど、日本の「おもてなし」に欠かせないデバイスになっているという。もちろん、単におもてなしというだけでなく、旺盛なインバウンド需要を取り込み、業績向上につなげたいというのが本音だろう。

ホテルや飲食、空港など多数の導入事例も増えてきた

基本的な使い方は、ポケトークのボタンを押しながら話しかけることで、翻訳結果が音声で読み上げられ、画面にもテキストが表示される。端末上ではなくクラウドに音声データを送って翻訳するため、動作には通信環境が必要となる。

問題は、個人が海外旅行に持ち出して利用する際の通信環境だ。そこでソースネクストはIoT向け通信サービスで知られるソラコムと提携し、「グローバルSIM」とのセット販売を提供した。日本だけでなく海外でも本体だけでデータ通信ができるのはユニークだ。

新モデルは自社開発、翻訳精度や通信機能が向上

9月に発売する新モデル「ポケトークW」の特徴は、ソースネクストが企画した自社開発モデルという点だ。初代モデルはオランダのTravisと共同開発していたが、新モデルは翻訳エンジンのひとつとして日本の情報通信研究機構(NICT)の技術を採用するなど、独自に進化している。

新旧モデルを合わせたポケトークの販売目標として、ソースネクストは2020年までに50万台との数字を掲げているが、新モデルの具体的な目標台数は公表していない。ただ、新モデルの自社開発に踏み切ったということは、初代モデルで手応えをつかんだということだろう。そしてもう1点、ライバル企業が翻訳機市場で手をこまねいているワケではない。少しでも競争力を維持するためにも自社開発の新モデル投入が必要だったのは、想像に難くない。

新モデルでは画面がタッチに対応し、ボタン操作も使いやすくなった。アジア言語を中心に翻訳精度が向上、通信機能は3Gに加えてLTEにも対応した。首から提げて使うことを想定したストラップホールなど、細かな使い勝手も見直されている。

新モデルは画面タッチに対応し、使い勝手が向上した

自社開発になったことで、販売地域も拡大しそうだ。初代モデルでソースネクストは日本、米国、カナダでの独占販売権を持っていた。だがポケトークWはさらにグローバルに展開できるため、海外の展示会などにも出展していくという。

イメージキャラクターにはタレントの明石家さんまさんを起用するなど、プロモーションも強化。新モデルの発表後はJTBグループが取り扱いを発表し、ベルギーのサッカーチームや東京ミッドタウン日比谷も採用するなど、導入が相次いでいる。

これまで小型翻訳機シェアの大部分を占めてきたというポケトークだが、7月31日にはロクバーがiliシリーズの新モデル「ili PRO」を発表するなど、競争は激化している。

対するソースネクストは、新モデルの投入とプロモーションによりポケトークのブランドを浸透させ、ライバルとの差別化を図るのが当面の戦略になりそうだ。

(山口健太)