ニコンが8月23日に開催する“特別な発表会”でお披露目するとみられるフルサイズミラーレスが写真ファンの間で話題になっています。一眼レフでは撮影性能や操作性、デザインが高く評価されてきたニコンだけに、今回のフルサイズミラーレスはどのような1台に仕上げてくるか……ということに注目が集まっています。

その盛り上がりに隠れるかのように、ニコン初のミラーレス「Nikon 1」シリーズがこの夏ひっそりと販売を終了しました。1インチセンサーを搭載してボディやレンズを小型化した入門者向けカメラ……といった印象を持つ人が多いと思いますが、一眼レフを超えるほどの速写性能を備えていたり、望遠性能に優れていたりと、一部に熱狂的なファンを抱えるほど高い評価を受けていました。本誌で執筆している落合憲弘カメラマンも、Nikon 1にゾッコン惚れた1人でした。

フルサイズミラーレスの登場を前に、落合カメラマンにNikon 1との思い出を語ってもらいました。

  • 速写性能の高さに着目して自腹で購入したニコンのミラーレス「Nikon 1 V2」を手にする落合カメラマン


私は、ニコンの「レンズ交換式アドバンストカメラ」のそこそこディープなユーザーだった。え? ア、アドバ、スス、カメカメ? な、なにそれ!?――平成最後の年、そんなことをいう人が早くも存在しているかもしれない。

レンズ交換式アドバンストカメラとは、平たくいえばニコンのミラーレス機「Nikon 1」のこと。ニコンは当時、どういうワケか「ミラーレス」という言い方を頑なに避けているように見えた。その代わりの、この舌を噛みそうなカテゴリー名称なのだけど、街や販売店でこれをフルに口にしている人に出会ったことは皆無。自分自身が口にしたこともない。こうして文字にしたことは、そうだな、3回目ぐらい、かな?

要するに、だ。ニコンはすでに本格的にミラーレスに参入済みだったワケ。つまり、近々お目見えするモノが「ニコン初のミラーレス機」ではないということ。そして、新聞などの報道では「ニコン初の“フルサイズ”ミラーレス機」について「ミラーレスに再参入」という表現が使われている。アレッ?と思って確認してみたら、Nikon 1っていつの間にか完全に消えていたのね……(交換レンズのラインアップは生存)。うわー、なんだかショックだわー。って、去年Nikon 1のシステムを丸ごと手放しているワタシがいうことじゃありませんけど。

速写性能が一眼レフを超えた「Nikon 1 V2」にゾッコン

Nikon 1の第一号機「Nikon 1 V1」の発売は2011年10月。早いもので、もうすぐ丸7年である。最初に見たときの印象は「うわ、カッコわりぃ」だった。機能にもさほど魅力は感じられず、購買意欲はソソられず。冒頭で「Nikon 1のディープなユーザーだった」ことを自称したばかりだけど、ジツはV1には見向きもしなかったのである。

  • 2011年10月に登場した「Nikon 1 V1」。EVF(電子ビューファインダー)内蔵の高性能モデルという位置づけで、EVFを搭載しない「Nikon 1 J1」も下位モデルとしてラインアップしていた

そんな私がNikon 1に“陥ちた”のは、2世代目の「Nikon 1 V2」(2012年11月発売)から。いやぁ、V2にゃイッパツでしたよ。画素数がV1の10.1MPから14.2MPに向上するとともに、AF追従15コマ/秒という一眼レフを明らかに凌駕するスペックを備えたことで、カメラとしての存在意義、言い換えるなら「ミラーレスであることの必然性」が明確になったのが大きかった。しかも、今度はボディデザインのハズし具合が絶妙(←ホメてます笑)。グリップのホールディング性も良かったし、そもそも約337gの軽量ボディなので片手での取り回しがチョ~楽々という、けっこういいバランスの「レンズ交換式アドバンストカメラ(ああ、やっぱりいいにくい……)」になっていたのだ。

  • 2012年11月に登場した第2世代モデル「Nikon 1V2」。グリップを大型化しつつ操作性を一眼レフに近づけるなど、デザインをガラッと変更。さらに、オートフォーカス追従で秒15コマの高速連写機能を搭載したことも大きな驚きを呼んだ

  • 1 NIKKOR VR 30-110mmは、焦点距離域を欲張っていないせいか写りはかなり良かった。そしてサイズはコンパクト。1 NIKKOR VR 10-100mm f/4-5.6でお茶を濁さず、必要に応じしっかり活用すべきレンズだった(Nikon 1 V2+1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6、ISO160、1/500秒、F4.0)

  • V2のISO1600。RAW撮り→キャプチャーNXで現像したものだけど、マダラ状に浮いてくるカラーノイズを上手に消すことができていない。けっこう扱いの難しい高感度画質だった(Nikon 1 V2+1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6、ISO1600、1/30秒、F3.8、-1補正)