独フランクフルトで開催されている「International Supercomputing Conference 2018(ISC 2018:国際スーパーコンピュータ会議)」において6月24日(独時間)、スーパーコンピュータ(スパコン)の処理性能ランキングである「TOP500」の2018年6月版が発表された。
スパコン性能トップを奪還した米国
今回のTOP500では、米国オークリッジ国立研究所(ORNL)に設置され、2018年6月より稼動を開始したIBM製AIスーパーコンピュータ(スパコン)「Summit」がLINPACKのベンチマーク122,300PFlops(消費電力8.8MW)で1位を獲得した。米国のシステムが世界一を獲得するのは、2012年11月版のTOP500で17.590PFlopsを記録したORNLの「Titan」以来、約5年半ぶりとなる。
Summitは、9216基の22コアPower9と2万7648基のNVDIA Tesla V100 GPUで構成され、6月8日には200PFlopsの演算性能を達成したという。
2位は、これまで4期連続(2016年6月版から2017年11月版まで)首位を守ってきた中国National Research Center of Parallel Computer Engineering & Technology(NRCPC)が開発し、National Supercomputing Center(Wuxi)に設置されているスパコン「Sunway TaihuLight(神威・太湖之光)」で、LINPACKのベンチマーク93.014PFLOPS/s(消費電力15.3MW)となっている。
そして3位には、米国がSummitと併せて「CORAL(Collaboration of Oak Ridge、Argonne、and Livermore)プロジェクト」として開発を進めてきたローレンスリバモア国立研究所(LLNL)の「Sierra」がLINPACKのベンチマーク71.610PFlopsでランクイン。こちらもIBM製で、22コアのPower9と、Volta V100の組み合わせとなっているが、アーキテクチャとしては若干異なるものが採用されている。
4位には中国National Super Computer Center in Guangzhouの「Tianhe-2A」(Tianhe-2のXeon Phiを独自アクセラレータ「Matrix-2000」で強化した版)が、LINPACKのベンチマーク61.445PFlops(消費電力18.5MW。Tianhe-2の性能は33.862PFLOPS/17.8MWであった)で、5位には日本の産業技術総合研究所(産総研)の「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(ABCI:AI Bridging Cloud Infrastructure)」がLINPACKのベンチマーク19.880PFlops(消費電力1.6MW)でそれぞれランクイン。6位以降は、6位にスイスSwiss National Supercomputing Centre(CSCS)の「Piz Daint」(19.590PFlops、2.3MW)、7位に米ORNLの「Titan」(17.590PFlops、8.2MW)、8位に米LLNLの「Sequoia」(17.173PFlops、7.9MW)、9位に米ロスアラモス国立研究所(LANL)とサンディア国立研究所(SNL)の「Trinity」(8.100PFlops、3.8MW)、10位に米国立エネルギー研究科学計算センター(NERSC)の「Cori」(14.015PFLOPS、3.94MW)と、近年の常連組みが名を連ねた結果となり、今回、上位5システムのうち4システムが新規稼動もしくはアップグレードによる性能向上を果たすことで、高い性能を達成した。
システム数では中国が、総合演算性能では米国がそれぞれトップ
前回のTOP500において、主要国別に見たTOP500に属するスパコン設置数で中国が米国を抜き去ったが、今回は、その差がさらに開き、中国206システムに対し、米国124システム(前回は中国202システム、米国145システム)となった。ただし、TOP500全体のの演算パフォーマンスは、米国が全体の38.2%、中国が同29.1%と米国が中国を上回る結果となった。
また、日本の登録システム数は前回より1つ増えて36、英国が22システム(前回15)、ドイツ21システム(前回20)、フランスが18システム(前回と変わらず)となっている。500システム合計の演算性能は1.22ExaFlops(前回845PFlops)と、ついに1ExaFlopsを突破。1PFlops超えのシステムも273システム(前回181システム)に達し、最下位(500位)のシステムであっても、715TFlopsと性能向上が続いている。
このほか、何らかのアクセラレータ/コプロセッサを採用したシステムは110システム。そのうちトップ10のうち5システムを含む98システムにNVIDIAのGPUが採用されているほか、7システムにXeon Phiが採用されている。
なお、HPLの性能/消費電力でランキングを行うGreen500については、1位がExaScalarやPEZY Computingが開発した理化学研究所(理研) 情報基盤センターの「Shoubu(菖蒲) system B」で、1Wあたりの性能は18.404GFlops。2位はExaScalarやPEZY Computingが開発した高エネルギー加速器研究機構(KEK)の「Suiren(睡蓮)2」で16.835GFlops、3位もExaScalarやPEZY Computingが開発したZettaScaler-2.2採用の「Sakura」で16.657GFlops、4位にNVIDIAが保有する社内スパコン「SaturnV」にVoltaを搭載した「DGX SaturnV Volta」で15.113GFlopsと、1~4位までは前回から若干の指標向上は見られたが、順位そのものに変動はない。ただし5位には、TOP500トップのSummitが13.889GFlopsでランクイン。SummitはHPCGのランキングでもトップを獲得しており、その総合的な性能の高さを示す結果となった。