現在、16事業部で22のアプリケーションを利用しているというが、今後は全社的なAI活用を広げる姿勢を示しながらも、AIソリューションセンターにおける重点的な取り組みとして、「3+1」を標榜。「ホームテック」、「モビリティ」、「エナジー」の3つを重点領域と捉え、それを支える要素技術に、「ディープラーラング&データアナリティクス」を位置づけた。

  • AIソリューションセンターにおける重点的な取り組み

ホームテックでは、今年秋にも第1弾の投入が見込まれているHOME Xの取り組みを紹介した。

「統一感のあるユーザーインタフェースと、製品や事業のタテの力を、ヨコに通すパナソニックユーザーエクスペリエンスの確立と統一を目指す。ここでは、HOME Xの実現の背後に、AIを活用することになる」と述べた。

モビリティでは、「CASE」と呼ばれる「Connectivity」、「Autonomous」、「Shared」、「Electric」の4つの取り組みを行うとし、「クルマ向けに対するサイバー攻撃への対応や、自動運転におけるAI技術の活用、配車管理や配車制御での活用、クルマ向け電池の寿命の管理などに活用する。配車管理においては、介護施設への送り迎えの配車にAIを活用するといった取り組みを行っている」とした。

  • モビリティ

また、エナジーでは、電池の材料開発への応用や、電池製造の効率化、電池の利活用に関する領域にAIを活用していくことになるという。

「社内から、AIに関して80件以上の問い合わせがあったが、そのうち4分の1以上がエナジーに関するものであり、今年4月以降、エナジーへの取り組みを新たに加えた」という。

  • エナジー

だが、これらの3つの重点領域以外にも幅を広げる考えをみせる。

具体的には、DAICC(=ダイク、Data & AI for Co-Creation)サービスを開始し、AIに関する相談などをワンストップで提供するという。

  • DAICC

「社内では、AIに関してどこに相談をすればいいのかがわからないという状況があった。また、AIに関する取り組みについても、それぞれに段階が異なるという状況が見られた。DAICCでは、AIに関する課題設定、データ収集・加工、モデル設計・学習、システム化・運用という各フェーズにおいて、コンサルティングやサービスを通じて支援をしていくものであり、事業部がAIを導入しやすい仕組みを提供する」という。

パナソニック AIソリューションセンター技術戦略企画部の井上昭彦部長

一方で、AI人材の育成を、さらに積極化させる考えであり、それにあわせて人材採用や育成プログラムの強化を進めることも示した。

AI人材育成プログラムでは、「当初は、パナソニックの技術者が得意とする画像認識などの領域が多かったが、各カンパニーからのニーズを調査すると、データアナリティクスに関連するニーズが高いことがわかった。そこで、いまはデータアナリティクスのコースを2つ増やし、そちらに重点をおいている」(パナソニック AIソリューションセンター技術戦略企画部の井上昭彦部長)という。

  • AI人材育成プログラム

また、ARIMOを買収して、AI技術を進化させたことなどにも言及。

「パナソニック社内には、画像処理や音声処理に関する技術者が多いが、データ分析ができる技術者が少なかった。とくに、時系列データを処理して活用したいという社内の要望が多かったが、それに対応できなかった。ARIMOは、時系列データの処理に強く、アルゴリズムを進化させつづけている。ただ、ARIMOの技術は万能ではないため、他の企業の力を借りることもある。パナソニックが持たない技術は、M&Aやパートナーシップによって手に入れることになる」(パナソニックの九津見所長)とした。

  • ARIMO

また、スタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学などのAI技術の専門家と連携したAIに関するオープンイノベーションで協業。さらに、立命館大学上方理工学部の谷口忠大教授がクロスアポイントメント制度により、1週間に一度出社し、パナソニックの社員と連携しながら、研究開発を行うなど、学術界との協業成果についても紹介した。

さらに、パナソニックのAIに対する基本的な考え方も示した。

パナソニックの九津見所長は、「AIは切れ味が鋭いツールである。一方で、パナソニックは顧客や業界のことを知っていることが強みである。AIという鋭いツールを選定し、それを使いこなすところに強みを発揮したい。例えるのならば、パナソニックは、家を作るのが本分であり、それを作るためにはどのツールが必要なのかを選ぶことになる。AIはここでいうツールであり、道具を使いこなしたり、使い分けたりすることができる大工のような存在でありたい」とした。