開発部門が、レノボグループに対して接触を開始したのは、2018年5月以降である。その点では、まだどこでシナジーを発揮できるのかが精査できていない段階にあるといえるだろう。

仁川執行役員は、「これまで自分たちでやってきたことには間違いはないという自負がある。だが、自負にこだわりすぎ、目の前にあるものを使わなかったり、使えないと一方的に判断してしまってはいけない」としながら、「今年1年間は、レノボの開発手法や仕事のやり方、ツールの活用や製品評価について学ぶ期間になる。開発という観点からみて、レノボとの協業効果が出てくるのは、来年の秋冬モデルになるだろう」とみる。

現時点では、コストダウン効果の規模は見えないというが、「協業の成果を最大化することに取り組みたい。できれば従来比2~3割のコストダウンを目指したい。協業した分だけ製品がいい方向に行くのが前提である」と意欲をみせる。

今後、両社間での情報共有などの取り組みを通じて、どんなシナジーを発揮できるのかを推し量ることになるだろう。

重要な部品も新ルートで入手できるように

レノボとの協業の成果は、調達面でも見込まれる。

CPUやOSなどの基幹部品については、これまでは富士通の年間360万台の取引のなかで調達をしてきたが、これが、年間5500万台規模というレノボグループの規模のなかで調達ができるようになる。このコストメリットは大きなものになる。

当然、共通利用する部品についても、レノボグループのなかでの調達メリットが生まれる。だが、調達メリットはそれだけに留まらない。

竹田弘康副社長兼COOは、「重要な部品のなかには品薄になるものがある。そうした部品を調達する上でも、これまでにはなかったルートからの調達が可能になる。これまでは取引がなかったようなメーカーの部品についても、レノボが評価した内容を精査して、調達できる」とする。

  • 竹田弘康副社長兼COO

すでにレノボグループの情報網を活用した部品調達によるメリットが生まれつつあるという。安定的な部品調達や、新たな部品の採用についても、レノボグループとの相乗効果を生むことができるというわけだ。

仁川執行役員は、「開発コストの削減、調達コストの削減が行われたとしても、トータル開発費用は削減せずに、同じ開発費用を維持しながら、より差別化できる領域への投資を増やしていけると考えている。お客様に提供できるバリューを強化することに、人員、時間、費用を活用していきたいとする」とする。

100の価格の製品を90で売るのではなく、100の価値を120、130にしていくことが基本姿勢。「価格以外での競争力を高めていくことにつながる」とする。  他社にはないものを提供していくというFCCLの開発姿勢は、これまでと変わらないというわけだ。