一方で、注視しておくべきなのが、プロセスオートメーション事業である。

パナソニックでは、事業部門ごとの利益率は開示していないが、2017年度実績で、コネクティッドソリューションズ社が達成した営業利益率9.4%を開示情報から逆算してみると、アビオニクス事業とプロセスオートメーション事業を除くと、営業利益率は約5%。しかも、アビオニクス事業が全体の足を引っ張る減益基調にあることを考えると、コネクティッドソリューションズ社全体の高い利益率の達成は、プロセスオートメーション事業の極端に高い営業利益率によって成しえたものであることが想定できる。

ちなみに、プロセスオートメーション事業には、樋口社長が、大学卒業後、パナソニックに入社した際に、初めて配属された溶接機事業も含まれている。

樋口社長は、「2017年度は、iPhoneの製造設備向けの特需があったが、2018年度は堅調な自動車関連ビジネスを伸ばして、2017年度と同程度の利益を確保したいと考えている。なかでも2つの新たな技術に期待しており、ひとつは、スパッターが極端に少ない高品質な溶接技術を持つSuper Active TAWERS。もうひとつは、テラダイオードの買収によって商品化した小型で高出力のダイレクトレーザー。ダイレクトレーザーは、EV時代に求められるパナソニックならではの技術であり、小型であることからロボットのヘッドにもつけることができる。レーザーの高出力を安定的に確保するには、アナログともいえるノウハウの蓄積が必要であり、そこにパナソニックの強みを発揮できる」とする。 地味な事業の集合体であるが、ここがコネクティッドソリューションズ社の高収益を支えている。

樋口氏が打ち出した「現場プロセスイノベーション」とは?

今回の説明会において、樋口社長は、「現場プロセスイノベーション」という言葉を新たに打ち出した。

現場プロセスイノベーションとは、パナソニックが製造業として培ったノウハウやロボティクスをテコに、顧客の「作る」、「運ぶ」、「売る」のプロセスを革新。これを、製造業だけでなく、物流、流通、小売りなど、あらゆる業種において、現場やサプライチェーンをイノベーションし、現場業務の生産性向上と、継続的な価値創出によって、顧客の事業の成長に貢献することを目指すコンセプトだ。

「労働力が不足し、賃金が上昇、省人化がまったなしという状況のなかで、画像認識やAIを活用することで、サプライチェーンにおけるお役立ちのチャンスが増大している。パナソニックは、100年間の歴史を持つ製造プロセスと、ロボティクスや画像解析といった差別化した技術を生かすとともに、現場から得られた情報をクラウドに蓄積し、AIで分析。次の現場に生かすことができる仕組みを提供できる。ここでは、すり合わせの技術が重視され、他社に模倣されにくいという特徴もある。ソリューションの厚みや付帯ビジネスの継続性もある。長年にわたる高い信頼関係を実現してきた企業姿勢、お客様とのライストワンマイルまで、現場で寄り添ってきたパナソニックだからこそ実現できるものである」と自信をみせる。

そして、樋口社長は、現場プロセスイノベーションを、「コネクティッドソリューションズ社が、今後、フォーカスすべきエリア」と表現。「パナソニックにとっては、立地がいいブルーオーシャンといえる領域になる。パナソニックが持つ商品を、部品として納めるのではなく、側面からプロセス全体を支えることを目指す。コネクティッドソリューションズ社が『塊』として展開し、お役立ちができるインテグレータになることを目指す」とする。

継続的な高収益体質を維持するためにも、「現場プロセスイノベーション」はキーワードになると位置づける。

コネクティッドソリューションズ社では、営業利益率10%を達成し、パナソニックの高利益体質のモデルを確立するというのが、樋口社長に最初に課せられたテーマであった。 それは、就任1年目でほぼ達成したともいえる。

だが、樋口社長は、「この延長線上で事業を進めれば、10%の達成は可能だろう。しかし大切なのは、持続可能な高収益事業体を作ることである」とし、「サスティナブル」という言葉を強調してみせた。

コネクティッドソリューションズ社の経営は、2017年度の実績をベースに、ギアを一段入れかえることになったともいえる。