続いて「IIJ フルMVNO徹底解説」と題し、同社の大内氏が、同社のフルMVNO事業について、主に技術的側面からの、非常にディープな解説を行った。どれくらいディープだったかは、IIJの「てくろぐ」に公開されている今回のスライド資料を見ればお分りいただけるかと思う。一例を示すと、フルMVNO用SIMのAPN自動設定プロセスにおいて、基地局やユーザー管理システムとどのような情報がやり取りされているか、といったことが事細かに解説されるのだ。
お恥ずかしい話だが、筆者程度の知識では内容の半分程度までしか理解が追いつかない濃さ(内容はわかっても「その知識が何の役に立つの?」と聞かれたら答えられない)。とはいえ、さすがに会場の聴衆はディープな人々が多いようで、こうした内容にも真剣に聞き入っていたのが印象的だった。
ブロッキングの是非はISPに迫られる踏み絵か
最後はフリートークということで恒例のQ&Aコーナーが開催されたが、ここでは特に旬の話題として、違法漫画サイトによって政府から方針が発表された「サイトブロッキング」についての見解についての質問と回答を取り上げたい。
違法サイトの視聴については、憲法で保障される通信の自由を侵害するものとされているが、過去には児童ポルノに関してのみ、緊急を要するということで例外的に、いくつかの海外サイトへのアクセスを禁止する措置がとられている。今回の違法漫画サイトについても、同様の緊急措置ということで法的問題をクリアしようというのが政府の見解だ。
ただしこれについては、ブロッキングは技術的にいくらでも回避できてしまうこと、被害額は大きいといえども本当に緊急性があるのか疑問であること、安易にこうした緊急措置を認めていると恣意的な検閲や情報遮断につながるのではないかと危惧する声も多い。
ここではIIJとしてというより、IIJが参加する業界団体からの意見として、との但し書きが付いたが、「ブロッキングは法的、社会的に問題が多く、技術的にも課題が大きい。また、単にブロッキングを回避するだけでなく、回避しようとしてフィッシングされたりするおそれもある。著作権を守る方法としては不適切なのではないか。これから先、政府の方針が変わるかもしれないので注視したい」との回答があった。
実際にはブロッキングの実施前にサイト側が閉鎖したようだが、ネットをめぐる犯罪は新たな技術の向上や登場に対して法整備が追いつかない現状にある。今回のように行政側はテクノロジーに必ずしも明るくなく、さまざまな思惑から不適切と思われるような手段を選ぶこともあり得る。そんなとき、業界団体などが技術的に正しい説明を行い、また周知することでストッパー役を果たす、今後はそんな必要も増えることを予想させる内容だった。
もうひとつ旬な話題として「+メッセージ」(RCS)の導入についても質問が寄せられていたが、こちらは3大キャリア側の受け入れ態勢がまったく不明なこと、+メッセージ自体がRCSをさらに拡張している可能性があり、純粋にRCSを導入しておけばどうにかなる問題でもないようであることなどから、現段階ではまったく未定とのことだった。メッセージングは今後重要性がさらに高まって行くことが予想されるだけに、MVNOを含めて全ユーザーが恩恵を受けられる環境になることを期待したい。
毎回ハイレベルな内容を楽しく聞かせてくれるIIJmio meetingだが、次回開催は7月に大阪と東京で予定。その頃には個人向けのフルMVNO事業や海外ローミング、IoT向けサービスなど、さまざまな情報が期待できる。もし興味を持たれた方は、ぜひ次回は参加してみてはいかがだろうか。同時にネット中継も行われているので、遠方の方は雰囲気だけでも味わってみてほしい。また、スライド資料は基本的に前出の「てくろぐ」で公開されているので、こちらも参照いただきたい。