忘れもしない2011年3月11日に起きた東日本大震災。Google の「パーソンファインダー」というサービスが、震災から1時間46分後の16時32分に公開された。2010年に起きたハイチ地震の際に作られたこの安否情報確認サービスは、日本のエンジニアなどの協力のもと、3月11日、12日と連日アップデートした。

「言葉にすると難しいところもありますが、あの震災が世界的に見て『インターネットが活用された大規模な災害』の初期の事例と言っていいと思います。私たちはインターネットに関わる会社ですから、災害に対してインターネットをどう活用していくのか、本当に色々議論して行ったんですね。パーソンファインダーに限らず、色んな形でサービスとして提供できたことで、他国で起きたほかの災害に対しても寄与できた部分があるように思います」(後藤氏)

例えば、Google マップで過去のストリートビューを遡って見られる「タイムマシン」機能について、後藤氏は「津波被害などで大きく様変わりしてしまった場所の光景を思い起こす、という意味で大切な存在なんだと、その機能の重要性に改めて気づけましたね」と振り返る。

ガラケーからスタートした後藤氏のマップ

"ガラケー"で使えるマップ、デスクトップ版、そしてスマートフォンとすべてを見てきた後藤氏は、「Google のありとあらゆるリソースを使い開発してきたと思います」と笑う。

「世界の多くは、道路名+番号で地域指定しますが、日本は細かく番地で示すピンポイントの"住所"。ですから、アメリカで作られた住所指定と日本の住所指定の整合性を取るのは本当に大変だった。最近まで私が携わっていた頃の機能が使われていました」(後藤氏)

しかし、Google の検索精度の向上への努力はとどまる所を知らない。ナレッジグラフと呼ばれるさまざまな情報の関連性をまとめた機能や、そこから先のエージェント機能「Google アシスタント」など、高度化する Google の検索機能にあわせてGoogle マップも進化している。

第3回で取り上げた津田氏が語ったように、音声による検索はすぐそこの未来だ。SFのように機械が自分の求める情報を的確に提供するためには、情報の整理を進めなければならない。だからこそ、人の生活に密着したマップの情報整理が必要不可欠なのだ。

「これまでのマップは、紙の地図が画面に入ったものが主でした。これからは、その時その場所、人、時間、地図だけでなく、実際の世界をアシスタントしなければならない。その時、ユーザーのコンテクストを理解する、いかに実世界を理解するか、が重要になります。個人個人の地図として、いかに作り変えていけるか。地図の民主化と、実世界のアシスタント。それが、私が目指す未来です」(後藤氏)

「地図」の高度化は、クルマの自動運転や、物流におけるドローン配送など、さまざまな分野で求められている。人の歴史は、地図を作る歴史でもあった。コロンブスがアメリカ大陸をインドと勘違いしたのは地図がなかったから。伊能忠敬が20年弱に渡り地図製作を行ったのは諸外国に対して日本の正確な領土を規定するためだったとも言われる。

Googleマップとてまだまだ未完成、後藤氏らは今日も、世界に新しい地図の価値を提供するために開発を続けている。