フリーアドレス制を導入しても、結局いつものメンバーで固まってしまったり、管理職が同じ部署の社員を周りに集めてしまったりなどの失敗例も珍しくはない。そこでIT戦略本部は、「毎日、同じ場所を固定的に利用しない」という運用ルールを設定。また、1人での複数席の使用や場所取りが禁止されているため、他人のために席を用意しておくことができないようにもなっている。

富士通IT戦略本部 IT投資マネジメント統括部長 片山真氏

一方で、どこにどの社員がいるのかが把握しづらいという問題も出てくるが、富士通 IT戦略本部 IT投資マネジメント統括部長 片山真氏は、「当社ではコミュニケーションツールにMicrosoft Skype for Businessを利用していますので、現状では本日の予定やメッセージに在席場所を入力する運用にしています。対面でコミュニケーションを取りたいときには、インスタントメッセージで呼び出せば良いわけですし、もともとIT戦略本部は新しいICTを積極的に使っていかなければならない部署です。フリーアドレス制を導入し、Skype for BusinessなどのICTツールを活用していくなかで、顔を合わせなくても仕事を回していけることに誰もが気づき始めている状況です」と話す。

IT戦略本部長から「全員がフリーアドレスを利用することを基本とする」という明確なメッセージが発信されたことも、フリーアドレス制へスムーズに移行できた理由のひとつとなっている。

「『フリーアドレス制を導入するのであれば、今後の会議はペーパーレスで』というトップからの強いメッセージがあったことで、コンセプトに対して反対意見や抵抗感はほとんどありませんでした。F3rdで先行して実施しており、働き方改革がある程度社員にも馴染みつつある状況でしたので、イメージを掴みやすかったというのもあると思います」 (片山氏)

  • PFUの支援のもと、デジタルツールを活用しながら電子データ化を行い、ペーパーレスを実施。目標は8割減だ

フリーアドレス導入の一番の狙いは、「コラボレーション」だとする片山氏。従来は、ちょっとした打ち合わせを行うのにも、会議室を予約する必要があったが、フリーアドレス制によって、気軽に打ち合わせを実施できるようになったことに加え、他のチームが行っている打ち合わせにも入って行きやすい環境ができた。これにより、実際に業務でのコラボレーションが進むきっかけになっているという。コラボレーションによって業務の改善を実現し、最終的には生産性向上につなげていきたい考えだ。

新横浜TECHビルの新オフィスは、まだ始動したばかり。新オフィスはワークスタイル変革につながっており、他支店から見学希望が殺到している。全社的に働き改革への取り組みも追い風になっているという。 「一歩先の働き方を考え、何でもトライする場」というコンセプトのもと、今後は継続してさまざまなことに挑戦し、振り返りを行いながら改善を進める。今後、新オフィスでの取り組みからどのような成果が生まれてくるのか、期待したい。