官民一体となって進められている「働き方改革」。クロコダイルやCITERAなど、カジュアルウエアの企画、製造、販売を行うヤマト インターナショナルでは、設立70周年を迎えるにあたり、若手が中心となって人事制度やオフィス環境を変革する取り組みを行った。

  • 東京都大田区にあるヤマト インターナショナル東京オフィス

今回、中心メンバーとしてプロジェクトを進めてきた同社事業戦略室の中山拓哉氏、プロジェクトを支えたパワープレイス 常務取締役の安井成人氏、内田洋行 営業本部 オフィスマーケティング事業部の星野剛文氏に、オフィス変革に焦点を当て、その取り組み内容を聞いた。

社内のコミュニケーション不足が大きな課題

2013年8月、「若手“Change”プロジェクト」を立ち上げ、40歳以下の若手社員を中心にこれからの働き方を考え始めたときから、同社の働き方改革はスタートした。

「社長は、若手とコミュニケーションをとれる仕組みを作りたいと考えていました。実際、若手と中堅社員が関わるシチュエーションが少なく、コミュニケーションが不足していることは、社内的な課題として抱えていたんです。それまでなかった社内研修制度も考えていたようです」(中山氏)

  • ヤマト インターナショナル 事業戦略室 事業戦略課 中山拓哉氏

同プロジェクトでは、社内公募で選出された約30人の若手が5~6チームに分かれ、各チームが「それぞれが描く10年後のヤマト インターナショナル」というテーマでプレゼンを行った。若手ならではの様々なアイディアや訴えがあったが、これまでの働き方、具体的には、人事評価や企業イメージ、社内環境の問題点を洗い出し、「設立70周年を迎える2017年に戦える企業でいるためには、どう変化するべきなのか」を訴えたチームが優勝した。

「Yamato 70th “Change!” Project」のロゴ

2014年にはプレゼンで優勝したチームのメンバーを中心に、「Yamato 70th “Change!” Project」が始動。社内環境の整備に向け、オフィスのリニューアルを進めた。

まず、2015年9月に現在のオフィス環境について、社内アンケートをとったところ、課長の誕生日席配置が古めかしい、レイアウト変更が多いのに移動しづらい、来客スペースと執務スペースとを分けたい、おしゃれなオフィスを希望するなど、さまざまな意見があがった。当時のオフィスへはネガティブな声が多かったという。

  • 社内アンケートで出た意見

目指すは企業戦略実現と働きやすさ、両方を叶えるオフィス作り

「アンケート後、内田洋行さんをはじめとする他社オフィスをいくつか見学しました。自分たちのオフィス改善案と比較したり、他の事例から学んだりしたかったからです。各社のオフィスづくりには大きな共通点が3つあり、1つめが各社の企業戦略をもとにしていること、2つめが必要な戦略に沿って臨機応変にチェンジできること、3つめが社員が自信と誇りを持って働けることです。オフィスは単に社員が働きやすいだけでなく、企業の戦略を実現する働き方と社員が自信と誇りを持って働く場のバランスを考えて作っていくものだと気づいたんです」(中山氏)

つまり、目標やビジネスの状況が変われば、オフィスのあり方、作り方も変わるということ。オフィスは生き物のようなものと言っても過言ではなく、進化し続ける空間でもあるのだ。

しかし、プロジェクトは順調に進んでいったわけではなかった。当初、予算はほとんど割かれておらず、お金をかけずにできることから進めるほかなかったと中山氏は振り返る。

「2014年12月に『Let's断捨離 身を美しくキャンペーン』を実施しました。ポップなネーミングにすることで社員の参加ハードルを下げる目的がありました。年末の大掃除を皮切りに、個人ゴミ箱を廃止・集合ゴミ箱の導入や、展示場の大掃除・整理などを行いました。もともと社員文化として「躾(しつけ)」という概念があって、この漢字は「身を美しくする」という自分たちがアパレルブランドとしても取り組まなければならないことでした」(中山氏)

  • 『Let's断捨離 身を美しくキャンペーン』

他にも、社員食堂の座席の間隔や配置などに手を加え、社員同士の交流が生まれやすくなるよう整えるなど、中山氏を中心としたメンバーは地道な活動を続けていた。そんななか「大阪本社が2016年8月に移転する」と、プロジェクトチームに内示されたのは同年3月のことだった。「中期構造改革」の一環として、4つのビルに分散していた拠点を1カ所に集約することが決まったのだ。