Appleがシカゴでその存在感を示したことには、2つの理由が考えられる。1つは、シカゴの公教育が全米第3の規模であり、AppleがGoogleからデバイス市場を取り戻した象徴的な地域であることだ。

今回のイベントでは、プロセッサーを向上させながら、これまでのiPad Proの約半額でApple Pencilに対応するiPad(第6世代)をリリースすることで、クリエイティブかつパワフルに対応できる身近なデジタル筆記用具であることをアピールした。

同時に、Googleが先行していた課題や学習の管理システムに対抗する「Schoolwork」と、このシステムから利用できる教育向けアプリのためのAPI、ClassKitを披露。パワフルなデバイスと、開発者の力を最大限に生かすAppleらしい方法で、Googleのブラウザベースのデバイスでは実現できない豊かな体験の可能性を示した。

そしてもう1つは、カリフォルニア州の外でイベントを行ったことに、非常に政治的な意味があると感じた。

トランプ政権との間で人種や移民などの多様性の問題、米国外生産に頼る工業と雇用の問題、富の集中の問題、気候変動の是非など、シリコンバレー地域は現在さまざまな対立を抱えている。テクノロジーのカリキュラムを含む教育も、その数ある問題に含まれ、また米国人にとって関心の高いテーマだ。

シリコンバレーの中で「テクノロジー教育の重要性」を訴えても、当たり前すぎて、シリコンバレー外からは特別視されて終わっていたかもしれない。より東海岸に近いシカゴでイベントを開催し、存在感を高めたことで、カリフォルニア外の人々にとっても、Appleが訴えたテーマが他人事ではない、というメッセージとなって広まっていくことになるのだ。