テクノロジー企業にとって重要な教育市場は、Googleに支配されつつある。

スマートフォン市場はGoogleとAppleが85:15の割合で分け合っているが、教育市場はMicrosoftが加わる。もともとAppleが教育市場で強さを見せていたが、ここ5年間で一気にGoogleが支配的な存在になりつつある。ざっくりと米国市場のシェアを言えば、Googleが5~6割、残りをMicrosoft優位でAppleとともに分け合っている状況だ。

Googleは教育機関向けに同社のBtoB向け主力製品であるG Suite(旧Google Apps)を無料で提供し、GmailやGoogleカレンダー、Googleドキュメントなどのコアサービスと、Googleドライブのクラウドストレージを提供している。デバイスは何でも良く、無料という教育機関にとってこれ以上ない魅力的な条件で、ビジネスの現場で標準的なデジタル・クラウド環境を提供しているのだ。そこに、Googleは2つの要素を加えている。

1つはGoogle Classroom。いわゆる学習管理システムで、先生が授業の教材や課題、テストなどを簡単に管理し、生徒たちもClassroomから授業の素材をダウンロードし、自分が作った課題を提出できる仕組みだ。しかも教員は、課題の採点もClassroom上から行える。また、Gmail、Googleカレンダーと連携し、課題が出されると自分のカレンダーに自動的に提出日が登録される。しかもAndroid、iOSアプリも用意されていることから、スマホだけでレポートを仕上げてGoogleドライブを介して提出することもできる。多くの生徒、学生にとって夢のような環境である。

  • Chromebook

もう1つの要素は、100ドル前後から手に入れることができるラップトップ、Chromebookだ。Google Classroom、G Suiteは全てブラウザ上で動作させられるよう設計されている。そのため、ウェブブラウザを切り出したようなChromebookでも十分快適なのだ。

こうして、世界中の教育機関で、Googleは7,000万人のユーザーを集めたのである。教育機関、あるいは自分でデバイスを所有する場合、イニシャルコストの低さは重要だ。そういったGoogle支配が拡がっているなかで、Appleは決め手となる教育機関にとっての基幹システムを持たず、価格が高止まりしているデバイスが導入コスト負担を増大させており、急激に競争力を失ってしまったのだった。