また、Watson StudioやWatson Assistantについても発表。「Watson Studioでは、深層学習や機械学習のモデルをパブリッククラウドで開発すれば、どこからでもそれを実装できるようになる。また、Watson Assistantは自動車産業やサービス産業向け、金融業界向けなどに、最初からトレーニングされているおり、すぐに組み込むことができる」とした。

Watson Studioで提供される深層学習機能は、IBMの分散型深層学習技術と最新のオープンソースフレームワーク技術に基づいたもので、複数のGPUを備えた多数のサーバで計算を処理した利用。また、IBM Cloudを通じて提供されるWatson Assistantは、人工知能、クラウド、IoTを組み合わせて、ビジネスと顧客のデータの秘密性とセキュリティを守りながら、企業のブランドロイヤルティの強化、顧客体験の変革につなげるスマートエンタープライズアシスタントと位置づけており、スマートAIアシスタントの未来になるとしている。

そのほか、IBMでは、社員のスキルチェンジに取り組んでおり、8000人のサイバーセキュリティ担当者や、1万5000人のデザイナーを採用しており、さらに、AT&T、シスコシステムズ、ワークディ、ベライゾン、VMwareなどと戦略的パートナーシップを締結していること、Watson HealthやWatson IoT、Watson for Financial Servicesなどを提供していること、そこにセキュリティ強化を前提としていることなどに触れ、「IBMは変曲点にあり、これは、ここにいるみなさんの変曲点にもなる」とした。

3社の企業トップがゲスト

ベライゾンコミュニケーションズのLowell C McAdam会長兼CEOは、「ベライゾンは、従来の垂直統合の通信企業から、水平展開の接続事業者となり、破壊者となる企業とも連携し、AOLやヤフーの買収によりオース(Oath)を設立する一方、大規模な通信設備への投資を進めてきた」などとし、「5Gは重要なものになり、産業革命を起こす可能性がある。モバイルデバイスでは、10Mbpsのスループットがギガビットとなり、ひとつのセルで1000倍のデバイスが接続できるようになる。さらにレイテンシーの改善も図られる。同時に、バッテリーが10年間長持ちし、軽量化したデバイスが利用できるようになる時代もやってくる。モバイルデバイスの充電が月に1回で済むといった世界も訪れるだろう」など、通信技術が大きな変曲点を迎えていることを示した。

  • ベライゾンコミュニケーションズのLowell C McAdam会長兼CEO

続いて登壇したIBM-Maersk Joint VentureのMichael White暫定CEOは、「アボガドの輸送には、30社が関わり、100人以上が関与し、200以上のやりとりがある。こうした煩雑さは、グローバル貿易において課題となっており、輸送費よりも管理費の方が高いといった指摘もある。業界全体をデジタル化する必要があり、ブロックチェーンの技術を活用することで、ビジネスの基本を維持しながら、統一された処理ができ、セキュアで、効率性の高い取引が可能になる。輸入に関して、80%の再入力作業が削減できる」などとした。

  • IBM-Maersk Joint VentureのMichael White暫定CEO

IBM-Maersk Joint Ventureは、運輸大手のMaerskとの合弁で設立した企業で、中立性を維持するとともに、オープン性を維持しながら、様々な海運企業におけるサプライチェーンの改善を図ることになるという。現在、25社が試験運用に参加しており、30社が参加を検討している。

ゲストとして最後に登壇したのは、RBC(カナダロイヤル銀行)のDave McKay社長兼CEO。「銀行は大きな変曲点にあり、業界のバリアが壊れようとしている。150年の歴史がある我々が変わっていかなくてはならない。データをAIで知識に変えて、それを価値にしていくことがこれから重要である。これは金融業界だけに留まらず、すべての業界においていえることである」などと述べた。

  • RBC(カナダロイヤル銀行)のDave McKay社長兼CEO

講演の最後に、米IBMのRometty会長兼社長兼CEOは、「多くの企業は、プラットフォームとデータを活用することで指数関数的に成長することができる。ビジネスにとっての変曲点であり、社会にとっての変曲点であり、IBMにとっての変曲点である」と繰り返し強調。IBMの大きな決断は、みなさんに賭け、データの時代に合う会社へと作り直してきたということである。歴史を持つ既存企業であっても、破壊する側の会社になることができる。IBMを信じてもらっていること、変革の旅路を支援する立場にすることを光栄に思う」と述べて、講演を締めくくった。