―― 2017年はランサムウェアが世界的に猛威をふるいました。これは、多くの人がアクロニスに注目する理由のひとつになるとともに、アクロニスのビジネスにも影響を与えているのではないでしょうか。

ベロウゾフ氏:ランサムウェアは、大変な脅威であることは間違いはありません。ただ、ランサムウェアが猛威をふるっていることよりも、データを守ることが大切だという意識が高まったことのほうが重要だと考えています。それこそが物事の本質です。

ランサムウェアがアクロニスのビジネスを成長させたというよりも、ランサムウェアがデータ保護に対する意識を高め、それによって、アクロニスに対する関心が高まったと認識しています。

企業や個人が持っているデータ、アプリケーション、システムは、常に攻撃にさらされ、悪意のある攻撃だけでなく、自然災害、ユーザー自身によるミス、システム脆弱性といったことが、より大きな課題になってきます。

アクロニスは、ランサムウェア対策のために、Acronis Ransomware Protectionを開発し、これを無償で提供しています。約50MBの容量に収めた軽量のものですし、システムへの影響も少ない。ぜひ、多くの方々に使っていただきたいと思います。実際に利用者は少しずつ増えていますし、私は、なるべく多くの人に、これを使っていただきたいと思っています。

ただ、人の習慣というのはなかなか変わらないものです。たとえば、「インフルエンザ予防のワクチン接種を受けましょう」とおわれてからすでに30年以上が経過していますし、無償でやってくれる国もあるのに、いまだに、ワクチン注射を受ける人は少ないままです。それで、インフルエンザにかかって苦しい思いを繰り返しています(笑)。

データのバックアップもそれと同じです。無償で対策できる環境を提供しても、面倒だからやらないという人がいます。日本では、バックアップを取るユーザーや環境は増えていますが、こうした習慣から変えていく必要があるでしょうね。まだまだデータ保護に対する意識が低いと感じます。たとえば、仮想通貨が普及してくると、データそのものが経済的な価値を持つものになりますから、サイバー攻撃の対象になってきます。

  • 無償で使える「Acronis Ransomware Protection」

実は私自身、アクロニスに入る前までは、サービスプロバイダーや仮想化、自動化が専門であり、バックアップに対してあまり詳しくありませんでした。そのときに、「バックアップは、人が歯を磨くようなものだ」という例え話を聞いたことがありました。誰でも、歯を磨くが、人が毎日、歯を磨くようになるには、かなりの歳月がかかりました。100年前に、毎日歯を磨いていた人はどれくらいいたでしょうか。

長い年月をかけて、人が歯を毎日磨くのが大切だと認識したのと同じように、データバックアップを取るのが大切であるということを、時間をかけて広めていく必要があります。習慣を変えるには、特効薬はありません。

我々も、もっと使いやすい製品を提供したり、効率性を高め、信頼性を高め、さらに、他の製品と組み合わせてもシームレスに利用できるようなものを提供しなくてはなりません。それらの観点では、完全といえるところにまでは到達しておらず、まだまだ改善する必要があります。すべてのユーザーが持つデータや、すべてのデバイスが持つデータをプロテクトするのがアクロニクスが目指すビジョンです。それに向けて、改善を加えていきます。