JAXAは3月15日、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟における小動物飼育ミッションについて、記者説明会を行った。
今回行われるのは、マウス計12匹を用いた動物実験。JAXAが「きぼう」での小動物ミッションを行うのは、これで3度目となる。マウスを搭載したSpaceX-14 ドラゴン宇宙船は現地4月2日に打ち上げ予定。
今回のミッションでは、宇宙空間における「ストレス」が生体に及ぼす影響を、マウスを用いて検証。宇宙滞在のリスクを軽減させる方策を見つけることで、宇宙飛行士のような特殊な訓練を受けた人だけでなく、一般の人が宇宙に行ける時代を模索していく。
ミッションを主導するのは、東北大学 東北メディカル・メガバンク(TMM)機構 機構長/ 大学院医学系研究科の山本雅之教授。マウス12匹をふたつの群に分けており、片方は野生状態のマウスの群で、もう片方は「NRF2」という転写因子を遺伝子ノックアウト技術で欠失させたマウスとなっている。
NRF2は生体防御を司る因子であり、酸化ストレスや毒物ストレスに応答し、生体防御系を活性化する。この働きが高まることでさまざまな疾患の改善がみられ、例として化学物質に起因するがんや白内障の予防、紫外線障害からの皮膚の保護などが挙げられた。これを欠失させることでストレスに敏感になるため、欠失マウスの健康指標の悪化を確認することを通して、NRF2の防衛機能を証明する。
余談だが、今回実験に用いる欠失マウスとは反対に、NRF2が過多に働くよう遺伝子改変したマウスは、食道上皮が過角化して離乳食が食べられず死に至る。あくまでもストレスが高まった際に働くことが重要で、過剰防衛状態はかえって生育に悪影響を及ぼす。
遺伝子組み換えマウスを打ち上げるのは、日本では初めて。今回のミッションでは、宇宙での採血を実施することがトピックのひとつとなる。金井宣茂宇宙飛行士が、マウスの給餌などと併せて担当する。 地上と比べて宇宙でどんな血中成分の増減があり、宇宙適応にどのような意味があるのかを検討するためのサンプルとし、宇宙空間で安定化させた上で地上に持ち帰る。
今後の展望として、白川氏はJAXAでは「きぼう」を利用する公募を年1回頻度で行っていることを挙げ、「きぼう」を使った成果を地上へ還元することを引き続き目指していくと語った。