東京工業大学(東工大)は、同大の研究チームが、アリやゴキブリのように複雑な脚部を持つロボットに階層制御装置アーキテクチャーを採用した新しい駆動方式を開発したことを発表した。
この成果は、東京工業大学 科学技術創成研究院 バイオインタフェース研究ユニットの小池康晴教授、吉村奈津江准教授、ルドビコ・ミナチ特任准教授、マッティア・フラスカ氏らによるもので、1月26日に米国電子電気学会(IEEE)のオープンアクセスジャーナル「IEEE Access」に掲載された。
研究チームは、生物の脳に着想を得た2階層構造を有する電子発振器の階層ネットワークに基づき、新たな歩行パターン生成手法を導入し、アリのような動きをする六脚ロボットの制御に応用した。この制御装置はふたつの階層で構成され、上の階層には中枢パターン生成器(CPG)をひとつ搭載し、ロボットの脚部全体の一連の動作を制御する。一方、下の階層には、6本の足に応じた6個の局所パターン生成器(LPG)が搭載されており、 各脚部の軌道を個別に制御している。
このたび開発された制御装置は、システムの柔軟性を重視してFPAA を実装し、自由度がきわめて高く、全回路パラメーターを即座に再設定およびチューニングできる。単純な配線構造であっても、生物の脳に見られる現象が再現可能であるということが実証された。
この新たな手法によって、実際の生物の動きにより近づくことに成功した。LPGは6本の足に、それぞれ3つの関節ごとにひとつずつ非線形振動子が取り付けられている。つまり18の振動子を2階層にして、上層のCPGが少ないパラメーターで全体の動きを制御し、下層のLPGが各脚部を個別に制御する。
今回、応用することに成功したアリ型6脚ロボットの制御方法で重要なのは、ハイパー・パラメーターにより、歩く動作、速度、姿勢などを明確に設定できることにある。パラメーターはダイナミックに変更可能で、将来はBCIを使用してリアルタイムにパラメーターを変更することが容易になり、現在では制御できない複雑な動作を制御可能になることが期待される。
また、この制御装置は徐々に効果を発揮し、生物学的に妥当と思われるパターン生成手法を実現していくことが期待できる。個別のコマンドをデコードする従来のシステムと比べると、よりシームレスで本物そっくりに動かすことができるようになると考えられる。