医療に関わるテクノロジーは日々進化し、最新のデジタル技術を活用して健康の維持や病気を予防する「デジタルヘルス」の分野は世界中で注目を集めています。関連イベントも国内外あちこちで開催され、先日大阪で開催された「メディカルジャパン大阪」ではロボティクスやウェアラブル、IoTなどを医療分野に活かす製品や技術が数多く紹介されていました。

今回の展示会で最も目立っていたのがコミュニケーション・ロボットの活用で、複数の企業から様々なタイプのロボットが出展されていました。遠隔医療や病後のケアをはじめ、健康的な日常生活を促すなど用途は幅広く、老若男女を問わず簡単に音声コマンドで利用できるという特徴があります。

中でもキーワードとなっているのは「見守り機能」。24時間365日対応できて、いざという時に家族や専門機関へ緊急連絡することができます。ソニーの「aibo」やシャープの「ロボホン」と同じように学習機能があるので、それぞれの生活スタイルにあわせてくれたり、表情やリアクションで楽しませてくれるのもポイントです。医療向けということで、日々のデータを解析してちょっとした変化から病気や異変を知らせるといった機能の開発も進められています。

会話で相手とつながる

個性を学習するパートナーロボットとして2017年発売開始になった「unibo(ユニボ)」は、高度な開発もできる機能を応用して、認知症の症状がある人とコミュニケーションして症状を改善することを目指しています。人では難しい対応もロボットなら根気よく続けられることから、会話を通じて状態を判断したり改善できるかなどを専門家らを交えながら行おうとしています。

  • ユニロボットが開発する個性を学習するパートナーロボット「unibo(ユニボ)」

小さくても健康を見守る

ちょこちょこと動き回る姿がかわいい「cinnamon(シナモン)」は、防犯や見守りなど幅広い用途を持ち、その一つに血圧計や活動量計を搭載して利用者の健康を見守る、医療補助用ホーム・ロボットとしての機能を備えています。集めたデータは健康データとして管理されるほか、かかりつけ医が遠隔で診療する際に使えるようにすることを目指しています。楽天と提携し、2018年春ごろから家庭用モデルが販売、もしくはレンタルされる予定です。

  • ドーナツロボティクス社の「cinnamon(シナモン)」は羽田空港にも採用されている

医療機関や家族がロボットを通じて見守り

海外からの参入もあり、「DinSow(ディンソウ)」は、日本と同じく少子高齢化が加速するタイで2016年から開発されている高齢者および遠隔医療向けのコミュニケーション・ロボットです。顔全体がディスプレイになっていてくるくる動き、カメラやマイク、通信機能が備わっていて、医療機関や家族が利用者を見守ったり、電話会議したりできるのが特徴です。薬を飲む時間を知らせるといった機能もありますが、写真を表示したりカラオケができるなどのエンタメ機能のほうが人気があり、日本からのオーダーも増えているそうです。

  • タイで開発されている「DinSow(ディンソウ)」は手足が付いたバージョンもある

遠隔地から対話できる

NTTのパーソナルロボット「Sota(ソータ)」も見守りおよび癒しロボットとして、利用者の健康や安全を守る用途で発売されています。遠隔対話アプリケーションを使えばパソコンからSotaを通じて話しかけることもでき、相手の状態も額のカメラでチェックすることができます。

  • 「Sota(ソータ)」はNTTのロボット型通信端末・ロボコネクトから2017年12月から発売

高齢者向けの赤ちゃんロボ

少し変わったロボットとしては、いやし系赤ちゃんロボット「スマイビ」のようなタイプも登場しています。高齢者は相手をしてもらうより世話をする方が普段の生活に活気が出るというデータもあることから開発されたもので、笑い声や泣き声だけであとは表情が変わるだけというシンプルな機能になっています。その分、価格は他のコミュニケーション・ロボットよりもリーズナブル(税別68,000円)で、壊れにくいのもポイントです。

  • いやし系赤ちゃんロボット「スマイビ」のデザインはバンドウイルカをモデルにしている