世界最大級の通信関連展示会「Mobile World Congress 2018」で、ファーウェイはモバイルPC「MateBook X Pro」などを発表しました。同社のConsumer Business Group CEOであるRichard Yu氏は今回、日本メディアのグループインタビューに応じ、コンシューマ製品戦略などを語りました。

  • Huawei Consumer Business GroupのCEOであるRichard Yu氏

強みは通信事業。5Gルータを参考展示

Yu氏は、日本に対する敬意をまず口にします。「ファーウェイの製品は、センサーはソニー、ディスプレイはジャパンディスプレイ、バッテリーはソニー、無線の部品では村田製作所、パナソニック、京セラとも長期的なパートナーシップを結んでおり、日本製品をたくさん使っています」。

ファーウェイは通信事業が本業で、通信に関して強みを持っているとYu氏は言います。「HUAWEI Mate 10 Pro」では他社に先駆け、4.5G世代の1.2Gbps通信を実現した、とアピール。今回のプレスカンファレンスでも、5G対応のルータ製品を発表しており、「率先して5G対応製品を出している」と話しています。

  • 5G対応のルータのコンセプトモデルが発表された。容量は3リットルほど大きく、重量は2kg。家の中に置き、インターネットにつながる製品を、有線接続から5Gに置き換えられる

「通信事業からビジネスをスタートしたのが他社に比べて優位な点です。ワールドワイドでネットワークを提供していて深い理解を持っています。チップセットやモデムも開発しており、ネットワークとの互換性を保ちやすく、性能が高く遅延の低いものが作れます」とYu氏はファーウェイの強みを強調します。

スマホ事業でApple抜き世界2位を目指す

アジアのほかの企業に対してはソフトウェアで強みがあり、アーキテクチャのシステムデザインに優れている、としたほか、米国の企業(Apple)に対してはハードウェアで勝っている、というのがYu氏の見立てです。逆に、Appleからは新しいビジネスモデルの作り方、エコシステムの構築、ソフトウェアのイノベーションといった点で学ぶべきところがある、としています。

「成功の秘訣」としてYu氏が語ったのは、「欲張りな会社ではない」という点。パートナーとなる企業にも利益が出るように共有しているとしており、部品のサプライヤー、生産、リテールなど、利益を分け合っているため、会社としての利益率は低い、といいます。しかし、これによって長期的な発展ができる、とYu氏は主張します。

現在、ファーウェイのスマートフォン事業は世界3位。Appleとサムスンの背中を追っている状態ですが、「足りないのはブランディング」と言います。スマートフォン事業参入時は中国国内でも10位にも入らない会社でしたが、数年でグローバルの三強に食い込みました。「諦めずに常に1番を目指す」とYu氏は強調。

そしてYu氏は言います。「この1~2年で2位になれると思っている。1位になるためには4~5年はかかるでしょう」。すでに2位のAppleを早期に抜いて、サムスンも射程に入れていることをアピールします。

もっとも、「業界でライバルを追い抜くことは難しい」とも言います。信頼されるブランドになる必要があり、革新的な製品を常に出して、ライバルよりも優れた製品を継続的に提供することが重要だと強調しています。

そして、「私は控えめな人間ではないので、チャレンジングな目標をチームに課して闘志を呼び覚まし、不可能をやり遂げていく」との考え方を披露し、一丸となって1位を目指していく姿勢を示しています。

米国市場参入の障壁は?

ファーウェイは、米国市場に本格的に参入できていません。米国市場がなくてもシェア1位を狙えるのでしょうか。Yu氏は、「ライバル社が恐れをなして、政治の力を使ってなんとか(自社製品を)排除しようとしている」と発言しています。米国市場では同社製品にさまざまな懸念が寄せられていますが、Yu氏は「170以上の国で事業をしているのに、たった1つの国で問題があると思われているのがどうしても理解ができない」と強調します。

「実際に問題を明確にしてもらえれば反論しようもあります」とYu氏は指摘。Yu氏の認識では、ファーウェイは中国に本社は置くもののグローバル企業であり、年間売上の60%以上が中国以外の市場からもたらされているほか、世界各地に研究開発やマネジメント、営業などの拠点を分散して、各国から優秀な人材を取り込もうとしている、としています。

「ファーウェイ設立から30年、そのうち25年は私もこの会社にいます」とYu氏。入社当初は「単なる中小企業だった」(Yu氏)ファーウェイですが、当初からグローバル企業を目指しており、政府や政治団体と深い関係を築くことはこれまでもなかったし、これからもない、と断言します。「必ず各国の法律、文化に則ってビジネスをしているし、その国でしっかりと尊敬される企業になりたいと思っている」とYu氏は言います。

「血の海の市場」を超え、PC事業に参入

今回、ファーウェイはノートPCの「MateBook X Pro」を発表しましたが、Yu氏自身、「なぜPCを作るのか、よく聞かれます」ということです。PC市場はレッドオーシャンで、熾烈な競争の市場との認識を示しつつ、「スマートフォンはレッドオーシャンを越えた"血の海の市場"です。そんな血の海を泳いできたのでレッドオーシャンぐらいはなんてことはないのです」と強烈な表現をします。

競争は問題ではなく、「あらゆるシーンでスマートな体験を実現するためにはPCが欠かせない」というのがYu氏の考えです。スマートフォン、タブレット、PCといった端末が、ユーザーにスマートな生活を実現するというファーウェイの戦略に不可欠なので、PC市場に参入したといいます。

「新しい分野に進出したからにはベストな製品を作るという意気込みがあります。きちんとその分野で革新的な製品を提供して、価値を創造していかなければなりません」とYu氏。

  • MateBook X Pro。キーボード内部にWebカメラを内蔵する

MateBook X Proは、使いやすさ、デザイン性、CPU、GPU、バッテリといった点で他社製品と比べて、「非常に優れているし、最も先進的なWindows PC」というのがYu氏の認識です。

P20/P20 Proで実現する一眼レフカメラの機能

主力のスマートフォン製品では、3月27日にフランス・パリで発表会を行い、「HUAWAEI P20」シリーズの新製品を投入することが発表されています。Yu氏は、ここで発表されるのが「HUAWEI P20とP20 Pro」だと明かします。

3つのカメラを搭載することが噂されていますが、Yu氏は「カメラが2つ、3つというのが重要ではなく、まず、性能を高める必要がある」と強調します。その上で、カメラ機能は「非常に優れた機能を持っている」と胸を張ります。それは、サムスンやAppleと比べても「大幅に性能が勝る」とのことです。

この機能は、「日本のパートナーと協力して実現できた」とのことですが、具体的な機能は明らかにされていません。ただ、ヒントとなるのが、「例えばキヤノンの5D Mark 3のようなカメラに匹敵するようなモノを作っていきたい」というYu氏のコメントです。

「一眼レフカメラでしか使えなかったような機能、実現できなかった性能をスマートフォンで実現したい」というのがYu氏の目標です。もちろん、一眼レフカメラはスマートフォンに比べてサイズが大きく、レンズも大型ですので、同じ機能をスマートフォンで実現するのはハードルが高いのは確かです。

「カメラ、センサー、モジュール、ISP(Image Signal Processor)、複数のレンズ、そしてアルゴリズム、さまざまな高い技術が求められ、さらにAIの処理能力も加えていくことで実現する」(同)ことが新機能になるそうです。

「この分野では他社に先行したい」とYu氏。一眼レフカメラのどういった機能を実現しようとしているのか、ファーウェイの挑戦に期待が募ります。