“食”を通じ、その土地の歴史や文化などを体験する「ガストロノミーツーリズム」。日本では聞きなれないが、海外では浸透している概念と聞く。インバウンドは増え続けるも“爆買い”には一服感のある日本で、次の一手としての“食”の旅には可能性を感じる。
ガストロノミーツーリズムとは
2月5日、国連大学で開催された「ガストロノミーツーリズム in Japan シンポジウム」に出席して、この概念が日本にフィットしそうだと思った。本稿ではシンポジウムで聞いた話を含め、インバウンド客に対する新たな提案として、また地方創生に向けた施策として、今後も十分な検討が必要と思われるガストロノミーツーリズムについてお伝えしたい。
まず、ガストロノミーツーリズムの定義だが、シンポジウムでは「その土地の気候風土が生んだ、食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズム」を意味すると紹介された。
食文化を通じ、その地域を体験するのがガストロノミーツーリズムだ。異なる文化を理解するための、ひとつの橋渡しが“食”なのである。
食べもの単品ではなく食文化としての訴求
ガストロノミーツーリズムの利点としては、①地域で差別化やユニークポジショニングが可能、②訪問客にかつてない新しい価値観や体験を与えることができる、③観光資源が乏しい、または未開発の地域でも始めることができる(小さな村でも起こせる)、④内容の紹介が容易でありストーリーを語りやすい、⑤訪問地域への高いロイヤルティーを生み、再訪意識をもたらすことができるという5つが紹介された。
当然のことながら、日本における“食の旅”で主役になるのは和食だ。和食が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたことは多くの日本人に認識されていると思うが、注目したいのは、和食が「日本人の伝統的な食文化」として、ユネスコの認定を受けているところだ。つまり、単品の食べ物としてではなく、文化として評価を受けているわけだ。
シンポジウムで聞いたところによれば、地域における観光資源と食を組合わせた取り組みは、官主導のケースと民主導のケースが入り混じってはいるが、日本各地で取り組まれているとの報告があった。