オンラインよりリアル店舗のほうが多い契約者

Yogiboはこれまで日本国内に約60カ所出店しているが、スマートフォンキャリアとのコラボはもちろん初めて。楽天モバイルも、他業種とのコラボショップはいくつか出店しているが、本格的なコラボはこれが初めてとなる。それではなぜ楽天モバイルではこうしたコラボ出店に取り組むのだろうか。

楽天で楽天モバイル事業を担当する大尾嘉宏人執行役員は、楽天モバイルでは全国45都道府県に191店舗を展開しているが、直近の今年1月には契約者は実店舗からが53%と、ついにオンラインでの契約者を逆転し、実店舗が重要なチャネルになったことを紹介。楽天カードをはじめとする楽天の各サービスとのシナジー効果も現れている。

  • 2016年比で店舗数は37店舗から181店舗へと約5倍に。直営店ほか量販店の販売スペースも含まれる

また同時に、楽天モバイルでは実店舗のスタート以来、携帯アクセサリーや下北沢のジェラート店・ViToなどとのコラボ店舗を展開してきた。今回は、携帯電話契約の手続きで発生する待ち時間をくつろいで待っていてもらえるよう、「快適で動けなくなる魔法のソファ」というほど快適さを売りにするビーズクッションのYogiboとコラボすることで、こうした待ち時間を解消してもらうとともに、楽天市場のモノやサービスを実際に体験し、購入へと連携できるショップの開設に至ったという。

いわゆるO2O(Online to Offiline)戦略のひとつだが、大尾嘉氏は「これからの店舗展開においては、単に契約するだけでなく、モバイル以外のライフスタイルの提案をしていくことが重要」だと指摘する。日本でもauの「au WALLET Market」のように、キャリアが携帯電話以外の商材をショップで扱っている例がある。しかし大尾嘉氏は「(リアルな商材を扱う場合)負ける気はしない。ネットを通じてポイントや決済などを広げてきたが、今後はもっと便利なものを提供していく」と、これまで「楽天市場」などで実績を積み重ねてきた自信を見せた。

  • スマートフォンは各種サービスの利用に欠かせないインフラへと成長。電話契約だけでなく「よりよい使い方」につながるようなライフスタイルの提案は当然ともいえる

またコラボ展開についても「ネットだけだった楽天市場の商品をリアルで体験できることが重要」と、実際に手にとって触れられる機会を設けることで、購買機会が増えることの利点を強調。今後はYogibo以外のブランドとのコラボ店舗の展開にも意欲を見せていた。 こうしたコラボ店舗は、楽天側から見た場合、携帯電話の契約時に楽天ポイントを核とした各種楽天サービスへの誘導がしやすくなり、また未経験のユーザーに楽天市場を紹介しやすくなるという点においても効果のある事業だと言える。またコラボするブランド側から見ても、単独出店するよりリスクが小さく、楽天ブランドを利用して新たな顧客層が掴めるなど、単なるショーケース展示以上の効果が期待でき、両者にとってWin-Winと言える関係が構築できる。

  • ビジネスモデルとしてはWin-Winの関係が期待できる。あとはコラボ先や展開場所さえ外さなければ大きな失敗は少ないだろう。なお、楽天モバイルは店舗展開にビッグデータを活用しているとのこと

確かにこれはリアルな商材を扱い続けてきた楽天ならではのショップであり、同様の効果を他のキャリアが実現するのは難しいだろう。また海外ではAmazonが無人店舗を展開しようとしているが、無人店舗は単に倉庫から欲しいものを持っていくようなものであり、楽天コラボショップのような体験型とは趣が違いすぎるため、シェアの食い合いにはならないだろう。

今後は定期的にコラボ先が入れ替わるショップなど、さまざまなスタイルが予想される。また楽天市場の人気ショップでも、リアル店舗を持たないブランドでは、貴重な実製品の展示機会となるケースも出てくるだろう。ユーザーの視点から見ても、なかなか興味深い、楽天の強みを生かした展開が期待できそうだ。