パナソニック「Let'snote」シリーズの王道モデル、12.1型の「Let'snote SZ6」が刷新され、「Let'snote SV7」として生まれ変わった。プロセッサに4コアの第8世代Intel Core i5/i7を搭載し、第8世代Intel Coreプロセッサ搭載の光学式ドライブ内蔵PCにおいて、世界最軽量の999gを実現している。

第8世代Intel Coreのうち、Let'snote SV7で採用されているTDP 15Wの"U型番"シリーズは、従来の2コアから4コアへ物理コアを増加させ(一方で動作クロックは低下)、全体的な処理能力が向上した。TDPは従来と同じ15Wだが、物理コアが増えたことで必要な電力が増え、発熱量も上がったという。また、シリーズ初となるPower Delivery対応USB Type-Cポートの搭載も大きな進化点といえるだろう。Let'snote SV7の開発にまつわる裏話を担当者に聞いた。

  • 左から順に、モバイル開発部 機構設計1課の図書千喜氏、パナソニック コネクティッドソリューションズ モバイルソリューションズ事業部 開発センターレッツノート総括の坂田厚志氏、モバイル開発部 ハード設計1課 主任技師の山本竜矢氏

まずは放熱対策から。必要な電力が前モデルから増えたため

  • 2018年1月25日に発表されたLet'snote SV7

――Let'snote SV7は外観より中身が大きく進化した製品ですね。今回のフルモデルチェンジのコンセプトは何でしょう。

坂田氏:そうですね。働き方改革に適するマシンを作るという目的で、Let'snote SV7(以下、SV7)は第8世代Intel Coreを搭載するためのモデルチェンジでした。基本的には、Let'snote SZ6(以下、SZ6)のフットプリントを変えずに、入れたい全ての機能を盛り込むことを目指しました。12.1型の液晶を積む、SZ6のサイズ感を引き継ぐことは当然の目標で、そのためにどういうレイアウトをするか、という方向で詰めましたね。毎度のことですが、同じシリーズの新モデルで、筐体を大きくすることはあり得ないので。

盛り込みたい機能というのは、第8世代Intel Coreだったり、USB Power DeliveryやThunderbolt3対応のType-Cだったりです。第8世代の"U型番"プロセッサは全て4コアになって、パフォーマンスは上がりましたが、安定して動かすために第7世代より電力が必要になりました。新製品の大きなポイントの一つが放熱対策ですね。

今回は基板もですが、光学ドライブの位置も変わっています。真ん中から、右に寄りました。ちなみに、本体の高さもSZ6より0.8mm低くなっています。ここ、苦労したように見えますが、実は意外と簡単で(笑)。 SZでは基板とファンが重なっていましたが、今回のSV7では、14.0型モデルLet'snote LXと同じく、基板とファンが重ならないようになっています。その分高さが減りました。怪我の功名ですね(笑)。

  • Let'snote SV7のメイン基板。SV7では基板をファンの形状に沿ってデザインし、基板とファンが重ならない形で配置した

基板が前モデルより大きくなったワケ

――SV7ではファンと基板が大幅に拡大していることが印象的でした。

坂田氏:基板を大きくしないとCPU性能が引き出せない、ということですね(笑)。メイン基板で変わっているポイントは、Thunderbolt3に対応したことと、USB Power Deliveryに対応したこと(※いずれもUSB Type-Cポートの対応)。このため基板面積がかなり拡大しました。

――Thunderbolt3とUSB Power Deliveryの搭載で、基板の面積が拡大するのですね。

図書氏:Thunderbolt3のための回路、そしてPower Deliveryのための回路の追加で、基板サイズは大きく変わってくるんです。

ファンとThunderbolt3、Power Delivery の3つのうちであれば、最も基板の大きさに影響したのは、基板の表と裏両方に必要なPower Deliveryの回路ですね。特に、このSV7では、Thunderbolt3とPower Deliveryの回路は、(前モデルから)純増したので。あと、CPUの電源回路も一部追加したため、これも少し大きさに影響しました。

  • Let'snote SZ6のメイン基板(右)と、Let'snote SV7のメイン基板(左)。SV7の基板サイズは、SV6と比べ大きく拡大している

Type-Cポートの純増がキツかった

――基板のレイアウトも大きく変わりましたね。

坂田氏:基板の配置はまずパーツの塊をおおまかに置き、細かい部分やパーツを詰めていく形で作っていきました。今回は、内部の基板が、メインとサブの2つに分かれていて、フレキでつないでいるサブ基板の方にUSBポート2基とLAN、D-Subが乗っています。転送速度が速いものをフレキでつなぐ別ボードに乗せるのは難しく、Type-CやHDMIのポートはメイン基板に乗せています。

図書氏:SV7では、SZ6から外のインタフェースをどうしても減らしたくないというのがありました。Type-Cを純増した関係上、基板では外部インタフェースの面積をキープしつつ、ファンやCPUを置く必要があるのですが、ファンやCPU、メモリに関連する回路はひと塊になっているので、ある程度のサイズをまとめて動かさないといけない。そのパズルが一番苦労しました。

山本氏:外部インタフェースのスペースを確保するために、 CPU関連の回路を基板の奥に引っ込めたくなるんですが、そうすると、CPUなどの熱を冷やすヒートパイプがどんどん伸びていくんですよ。なので、設計としてはCPUとメモリの塊をできるだけファンの方に寄せてあげたい。こういった部分をギリギリまで調整するのに苦労しました。

坂田氏:ヒートパイプが伸びると、重量が重くなる上に放熱性能も落ちるんですよ。ヒートパイプ上で熱を行き来させて放熱するのですが、ヒートパイプが長いと、熱が戻ってくるまでに上がってしまうんです。だから本当は、放熱の部品は熱源の上に直接乗せるのが一番効率的です。グラフィックボードみたいに。

  • Let'snote SZ6のメイン基板(左)と、Let'snote SV7(右)のメイン基板

――基板のおおまかな配置が終わればもう、完成予想図が見えそうですね。

図書氏:どんでん返しもありますよ(笑)。今回でいえば、この背の高い部品(USB Type-CのPower Delivery用コイル)が、端末の高さ制限にひっかかりました。筐体を一部削ったり、絶縁テープを貼ったりと、回避方法はいろいろあるのですが、高さのある部品はハード設計や機構設計の担当者が相談して対応します。

このコイルはパームレスト左側にあるので、この部分が発熱するとユーザーの使い勝手に大きく影響します。法人向けモデルでは、オプション扱いのFeliCaチップが来る位置なんですが、板金にあたってしまうので、(該当モデルでは)板金の形状をいじってもらっています。ここの苦労も大きかったですね。

  • USB Power Deliveryの回路。四角い灰色のパーツが、パームレストにひっかかり改善した高さのあるコイル

PD対応で、どこでも本体を充電させたい

――Type-Cの搭載は12.1型のLet'snoteで初ですが、そもそも需要があったのでしょうか。

坂田氏:需要もありましたが、ようやく対応の周辺機器が出始め、Type-Cを載せることで、うまく使えばデスクトップPCの代わりができるんじゃないかと思いました。Power Deliveryにも対応させれば、AC電源がないところでも本体を充電できますし。

今はスマートフォンやタブレット向けに、大容量のType-C対応モバイルバッテリを持ち運んでいる人が多い。それをうまく使えれば、利用シーンが大きく広がるのではと。ちなみに本体の充電に必要な出力は、PCの電源オフ時は15W以上、電源オン時は27W以上です。

バッテリは、第8世代Intel Coreの安定動作に必要な電圧を確保するため、SZ6のバッテリで行っていた並列接続から、直列接続に変更しました。直列にすると電圧が上がるので。電池の容量自体はSZ6と同じ6セルで、消費電力は変わりません。

  • 左側面にUSB Power Delivery対応のUSB Type-Cポートを備える

――Power Deliveryの入出力設計はどうなっているんでしょうか。

坂田氏:出力はType-Cの仕様通りの5V/3A、入力も仕様通りの20V/5Aで受け取ることができます。ただ、100Wは使いません。内部で受け取るのは85W程度です。ACアダプタが85Wで、そもそもそれ以上必要ないんです。

――SZより、必要な電力は大きくなりましたね。

坂田氏:CPUのターボブースト時に少なくとも44W必要じゃないですか。加えて、USB 3.0が3基付いていて、そのうち一つは給電対応です。

各ポートを動かすのに必要な電力は5V/0.9A(4.5W)、5V/0.9A(4.5W)、5V/1.5A(7.5W)となります。合計で16.5W。そして今回載せたType Cポートが15W。それだけで30Wを超えますよね。その上、液晶やWi-Fi、LTE、SSD、光学ドライブ……と、電力が必要なパーツがいくつかあります。ここをクリアして、残った電力で充電しなくちゃいけない。全機能がフルで使われるかは別として、SZ6で必要だった65Wよりは強化しています。

本社移転の影響はなし。東京で集まる「声」に期待

――外観は前も後ろもわずかに丸みを帯びた形に変更されました。重量は最軽量時0.99kgということでかなり軽いですが、開発時、このぐらいの重さにしたいという目標値はあったのでしょうか。

坂田氏:丸み部分は、少しでも細く見せたいという、デザイン上の話ですね(笑)。その"わずか"でも、薄く見えるんじゃないかと思ってやっています。無骨とは言われますが。

  • SV7のエッジ部分は、SZ6よりわずかに丸みを帯びた形になった

重さについては、今回確実に重くなるのがわかっていたので、どう軽量化するかを悩みました。ユーザーさんからすると、数字を見て1kgと言われると、外へ持って行こうという気が削がれるじゃないですか。なので1kgを切るところを目指しました。

ちなみにビジネス市場では軽量のニーズもあるだろうと考え、SZ6は法人向けのみ併売します。コンシューマー向けでは残しません。法人ではThunderbolt3や第8世代Intel Coreプロセッサが必要ないというお客さんもいるので。今は過渡期だと感じています。Let'snote SV7の法人向けモデルでは、CPUは第8世代ですが、Thunderbolt3なしの製品も用意しています。

  • Let'snote SV7の法人向けモデル。PCの稼働時間やアプリ使用時間、業務時間などを可視化できる有料サービスも提供される

――それでは最後に。樋口社長がパナソニックに参加し、2017年11月から本社が東京に移りました。今回のSV7は東京本社の第1号機にあたるわけですが、開発の過程で何か変わった点はありましたか。

山本氏:樋口さんは社員の意識改革に力を入れている、社員同士コミュニケーションを密にとることを大事にしている、ということを社内にいると感じます。Skypeでの会議も今までより増えました。社員同士のやりとりを効率良く進めるということで、 帰る時間が早くなった部分はありますね。

坂田氏:開発的には変わってないといえば変わってないですが、インプットの情報量は変わったかもしれません。東京に本社があった方が、お客さんから収集できる情報量は多い。とはいえまだ本社が移転して3カ月なので、具体的な実感はありません。期待も込めて、になりますが(笑)、今後の開発に必要な、ユーザーの要望の声を、今までより多く集められると思っています。 (※開発は大阪府守口のまま)

――ありがとうございました。