IDC Japanは2月5日 国内LPWA(Low Power Wide Area)市場に関する分析結果を発表した。これによると2018年はLPWA規格間競争の勝敗が見え始める重要な年になるという。

昨今、IoT(Internet of Things)に特化したシンプルな広域ネットワーク技術であるLPWAの商用提供が始まっており、LPWAは低コスト、低消費電力など、従来の無線ネットワークでは満たすことが難しかったIoTニーズに対応できるソリューションとして期待を集めている。

ターゲット市場を3つに分類

今回の調査では、国内LPWAサプライヤーのターゲット市場を全国カバレッジ市場、エリアカバレッジ市場、草の根市場の3つに分類し、ターゲット市場によってLPWAサプライヤーの戦略が大きく異なることが判明したという。

全国カバレッジ市場は、全国で利用される同種かつ多数のモノ(製品)/サービスに当初から組み込まれるか、そのようなモノに後付けされるIoT広域ネットワークの市場。全国にサービスを展開する大手モバイル通信事業者のLPWA(セルラー系LPWA)やSigfoxの主なターゲットとなる。

エリアカバレッジ市場は、限定されたエリア内でのLPWA展開ニーズに応え、特定都市の都市インフラや民間の土地/施設用インフラとしてIoTネットワークが展開される市場となり、LoRaWANの主なターゲット。

草の根市場は全国カバレッジ、エリアカバレッジの2つの市場よりも小規模かつ限定的な用途でIoTへの取り組みが行われる市場。スタートアップを含むIoTに関する何らかのアイデアを持つさまざまな企業が、小規模にIoTへの取り組みを開始し、IoTネットワークを活用する市場で規格によらないものとなる。

  • 国内におけるLPWAサプライヤーの3つのターゲット市場

    国内におけるLPWAサプライヤーの3つのターゲット市場

規格間競争で重要となるものとは

LPWAネットワークは、さまざまな場所に導入され、末端の機器(デバイス)から最寄りの無線基地局までのラストワンマイルに、どのLPWA規格が適合するかはエリアやモノ、設置場所の特性によって異なる。

そのため、同一案件の中でも安価で安定した通信を行うために複数の規格をハイブリッドに組み合わせるケースが多く、複数の規格が主流になる可能性が高いと考えられるという。一方で、今後はLPWAデバイスが量産フェーズに入り、デバイスメーカーによる規格の選別が進むことで、比較的早い段階で規格の淘汰が始まると想定している。

規格間競争では、技術的優位性とエコシステム構築が重要となり、現在では市場に多くのLPWA規格が存在する。このような状況下において、セルラー系LPWAはカバレッジの広さや実績に基づくパートナー企業からの信頼などの点において、一定の優位性が見込まれているが、そのほかにもいくつかの規格が主流になる可能性があると指摘。

2017年までは、LPWAサービスが出揃っていないなど規格間競争を見通すことは難しい状況だったが、2018年はLPWAサービスが出揃い、LPWAデバイスの量産が拡大するなど市場の進展が見込まれることから、LPWA規格間競争の勝敗が見え始める重要な年になると同社は予測している。

多くのIoTプロジェクトでは末端のセンサから得られるデータをクラウドに送信する「データ取得」が課題の1つとなっていおり、低コスト、低消費電力などの優れた特性を持つLPWAはデータ取得のハードルを下げる技術として有望だという。一方で、IoT市場はまだ揺籃期であり、LPWAの利用を拡大するには、IoT市場全体の一層の活性化が求められる。

同社のコミュニケーションズ リサーチマネージャーの小野陽子氏は「IoTに取り組むサプライヤーには、企業のIoTへの関心を高める、LPWAやIoTプラットフォームなどでデータ取得のコストを下げる、水平展開できるソリューション事例を増やすといった、市場に好循環を作り出すための努力が求められる。こうした取り組みによって、LPWAのコスト低減がさらに進み、利用が加速するであろう」と述べている。