eSIMの登場によって何が変わる?

そしてIIJ公式Twitterアカウントの「中の人」として知られる、ネットワーク本部技術企画室の佐々木太志氏から、「eSIMとMVNO」と題し、昨今話題のeSIMについて紹介があった。

  • 堂前氏とのコンビでイベントに出席したり、技術的な記事の執筆等でユーザーへの露出が多く、すっかりIIJファンにはおなじみの佐々木氏

佐々木氏はまず「SIMとはなにか」の定義から紹介。eSIMとは、狭義では「OTA(On The Air)によるリモートSIMプロビジョニング(RSP)の標準化に対応したSIM」であり、広義では標準化されていないOTA-RSPに対応したSIM、または組み込み用途(enbedded)のSIM、のことだという。このうち一般ユーザーに関係してくるのは前2つのほうだ。

RSPというのは、SIMが抜き差しできない状況で、遠隔でSIMを書き換える技術のことを指す。こうした機能自体は以前から提供しているメーカーがある(たとえばアップルのApple SIMなど)が、それぞれ独自の形式でやっていては、キャリアごと、メーカーごとの形式ができてしまい不便だ。そこで携帯通信事業者の業界団体である「GSMA」が世界標準として標準化を行なっており、コンシューマ向けとしては2016年1月にウェアラブル向けのバージョン1が、同年11月にスマートフォン向けのバージョン2が策定済み。今年第2四半期のバージョン3策定に向けて作業が進行しているという。

GSMAが想定する使い方としては、eSIMのQRコードを読み込むとネットに接続してサーバーから設定用のプロファイルをダウンロードし、インストールすることで使えるようになるというものだ。海外旅行などでSIMを購入して差し替えるのが、QRコードを読み込むだけでよくなる、というイメージだ。プロファイルをダウンロードするサーバー(SM-DP+)が適切に見つかるようなサーバー(SM-DS)の元締めとなるルートサーバーをGSMAが昨年9月から提供している。

  • コンシューマ向けeSIMのアクティベーション手順。実際にユーザーからは見えないが、このように複雑な手順を経て利用可能になるのだという

ちなみに独自方式のAppleなどは、自前で全てのApple SIM対応キャリアのプロファイルを用意しておき、そこから読み込むようにするだけで済むわけだ。対応するキャリアが限られているからこそできる方法といえるだろう。

最後にSIMカードの進化形態としてのeSIMに触れ、中国で実装が進んでいるTEE based SIMや、QualcommがSnapdragonプロセッサに内蔵させようとしているIntegrated SIM(iUICC)などが紹介された。

eSIMが普及しても、それは通信速度の改善やSIMのコストダウンといった要件に直接繋がることは少ないだろう。そういう意味ではあまり直接ユーザーと関係する機能ではないかもしれないが、SIMフリースマートフォンの機能として搭載されるようになるのもそう遠い未来の話ではないだろう。

トークセッションの終了後はTwitterや会場からの質問に答えるQ&Aセッションが行われ、IIJmio metting 18は閉会した。

  • ミーティングの終了後には懇親会も開催。IIJのスタッフと語らう貴重な機会だ

ユーザーとMVNOの接点になる貴重なイベント

筆者がIIJmio meetingに参加するのは3回目だが、毎回高いレベルの内容を楽しく聞かせてくれるという点では、他に類を見ないイベントだと言える。扱われる話題も業界のトレンドにタイムリーであり、質も量も実に大盛りで濃厚だ。

次回開催は4月の予定。おそらくIIJが予定している「フルMVNO」について、様々な情報が提供されるはずだ。もし興味を持たれた方は、ぜひ次回は参加してみてはいかがだろうか。同時にネット中継も行われているので、遠方の方は雰囲気だけでも味わってみてほしい。