米ネバダ州ラスベガスで開催されたCES 2018は、いよいよ「家電見本市」という表現が当てはまらなくなってきた。新聞各紙の報道も、引き続き「家電見本市」という媒体がある一方、「家電・IT見本市」、「テクノロジーイベント」などといった表現を用いる例があった。
実際、家電は主役の一角を担うものの、主要な自動車メーカーの出展により、自動運転時代を見据えた展示が目立ったほか、GoogleやAmazonの音声アシスタントをはじめとするAI機能活用や、ロボティクス、ドローンに関する展示が増加。ヘルスケアやIoT、ウェアラブル、スマートシティに関する展示など、内容は多岐に渡った。
CESの主催者であるCTA(Consumer Technology Association=全米民生技術協会)は、2016年から、かつてのCEA(Consumer Electronics Association=全米家電協会)から名称を変更。エレクトロニクスからテクノロジーへと主軸を移した同協会の立ち位置を明確に示したイベントになったともいえるだろう。
また、3900社以上の出展のうち、約1700社が中国企業というように、米国における展示会ではあるが、中国という新たな勢力が台頭していることを感じさせるものとなった。では、日本企業はどうなのか。
ソニーのDNAは「コンシューマ製品の強さ」
CESにおいて、日本企業の主役の座を長年担っているソニーとパナソニックの2社が展示した内容は、これまで以上に対照的だった。それは、両社社長の発言一つとってもそうだ。
ソニー 代表執行役 社長 兼 CEOの平井 一夫氏は、「コンシューマエレクトロニクス領域において、さらなるイノベーションを追求すること、そして、新たな事業への挑戦という2点を展示の軸にした」と語っていた。一方でパナソニックの代表取締役社長である津賀 一宏氏は「他社のブースには、もっとBtoBが並んでいるのかと思ったがそうでもなかった。パナソニックだけが家電の展示がなかったことには驚いた」と話す。
平井氏は、CES 2018の会場における共同インタビューでも、「お客様に直接お届けするコンシューマ製品をいかに強くしていくかが、ソニーのDNAであり、一番得意としているところである。コンシューマビジネスを大事にしていくことが私の強い意志である」と語っていた。
その言葉を裏付けるように、ソニーブースでは、コンシューマ製品が目白押しだった。例年通りに、ブース入口で最新のテレビを展示したほか、デジタルカメラやヘッドフォン、日本のみ発売されているaiboを米国で初公開するなど、数多くの最新コンシューマ製品を展示した。
有機ELテレビでは、55型/65型の「BRAVIA A8Fシリーズ」を展示。高画質プロセッサ「X1 Extreme」によって、有機ELパネルの特長を大限に引き出した深い黒や明るさを表現するほか、画面自体を振動させて音を出力する「アコースティック サーフェス」を採用し、映像そのものから音が聴こえるような臨場感を実現している。
また、高画質化への取り組みでは、次世代の高画質プロセッサ「X1 Ultimate」を参考展示。前述のX1 Extremeと比較して、約2倍のリアルタイム画像処理能力を実現した上、液晶/有機ELのパネルの違いを乗り越えてそれぞれの特長を引き出し、高レベルの画質を実現できるという。
これに加えてブース内では、4K有機ELディスプレイと8K液晶ディスプレイによるデモストレーションを行った。8Kでも独自の画像処理技術とバックライト技術を組み合わせて、HDRフォーマットの最高値である10,000nitsの超高ピーク輝度を表現するなど、X1 Ultimateが実用段階にあることを示した。
さらに、ヘッドフォンではワイヤレス ノイズキャンセリング ステレオヘッドセット「WF-SP700N」を展示。左右独立型ヘッドフォンとして世界初となるIPX4の防滴対応を実現したスポーツシーン向けのもので、アークサポーターの採用により、重心位置を工夫した設計で高い装着安定性を実現している。国内でも発売する予定だ。
海外でも人気の「aibo」
一方、苦戦が伝えられているスマートフォンの「Xperia」だが、ミッドレンジモデルとなる「Xperia XA2 Ultra」を公開した。6.0型フルHDディスプレイや約2300万画素のメインカメラを採用したほか、フロント部に手ブレや暗所に強い1600万画素の高精細カメラと、大人数を写せる約120度の超広角の800万画素セルフィーカメラの二眼を搭載した。
また、新機軸コンセプトの製品を投入するLife Space UXからは、4K超短焦点プロジェクター「LSPX-A1」を展示し、注目を集めていた。人工大理石の天面に加えて、木目調の棚を採用することで、家具のように居住空間になじむ佇まいを実現。壁面に置くだけで最大120型の4K HDR 大画面を壁に投射できる。
だが、目玉として海外メディアから特に高い関心を集めていたのが「aibo」だ。
海外における展示は今回が初めてで、平井氏は「海外でも、一度は本物を見てもらい、様々なコメントを得たいと感じた」とその狙いを語る。というのも、ソニー本社で開発し、ソニー本社の日本人エンジニアが開発した製品がaiboだ。「日本人の目で見ているから可愛いものなのか、それとも米国人や中国人にとっても可愛いと思ってもらえるのかといったリアクションを知りたいという目的もあった」というのだ。
まずは日本の需要を優先し、台数が確保できるようになった段階で海外展開を目指すと平井氏。aiboは部品点数が多く、製造に時間がかかる商品のため時間がかかるとして「ちょっと時間はかかるが、確実に供給できることを前提に発売することが、お客様にとって一番不利益にならない形での市場投入になると考えている」(平井氏)。