過去最高益を目指す今のソニーの勢いを表すように数多くの製品を展示したソニーだが、平井氏はこの攻勢ぶりを「これらは、KANDO(感動) at Last One Inchを実現する製品を展示した」と表現する。

そうした中で唯一、B2B領域で展示したものが「車載向けイメージセンサー」だ。平井氏は、プレスカンファレンスで、トヨタと日産、デンソー、ボッシュ、ヒュンダイ、KIA、NVIDIA、モービルアイとパートナーシップを組んだことを公表した。展示コーナーでは、高解像度、高感度、ハイダイナミックレンジの技術デモを行っており、自動運転社会の到来に向けた技術力の高さをアピールした。

平井氏は、車載向けイメージセンサーへの取り組みを、「人間の目を超えるセンシング能力を持つソニーの高性能なイメージセンサーを、クルマの目として高度な完全自動運転社会の実現に貢献したいと考えている」と話す。ただし、ソニー自身がクルマづくりに直接参入するのではなく、あくまで「イメージセンサーの技術で、自動運転の領域で貢献していくことになる」(平井氏)という。

とはいえ、単なる部品屋という立ち位置に収まる気もないようで、「単純にイメージセンサーだけを供給するのではなく、その技術にプラスαとなるソニーならではの付加価値を提供するビジネスモデルを確立したい」(平井氏)とも語っていた。カメラ事業などで培った各種認識技術などの応用を目指していくものとみられる。

唯一の共通事項は「自動車産業」

一方のパナソニックは、3月に創業100周年を迎えることもあり、記念展示として第1号家電製品とともに最新家電製品を展示。また、未来の住空間環境プロジェクト「HOME X」のコンセプト展示も行っていたのだが、一般的な家電メーカーが行う商品紹介を主軸とする家電の展示はメインブースで一切行わず、ホテルに確保した別会場に招待者だけを招いて公開した。

こうしたパナソニックの姿勢の変化は、2013年1月に行われたCESの基調講演で津賀氏自身がB2Bシフトを鮮明にしてから一貫している。

「パナソニックは、テレビだけの会社ではなく、B2Bへ全面的にシフトし、さまざまなパートナーとともに、顧客の生活するスペースでお役立ちする道を広げていくことを話した。その中核になる技術やモノづくり力は家電で培ってきたものだが、パナソニックブースからは、できるだけ家電製品を減らしていくことに取り組んできた」(津賀氏)

コンシューマにこだわり続けるソニーと、B2Bにシフトしたパナソニック。日本を代表する2社だが、その方向性の違いは明らか。

ソニーの平井氏は、「電機メーカー各社は、以前は同じ方向を向いてCESに出展していたが、ソニーにはソニー独自のやり方があり、他社には他社のやり方があるということが明確になった。自分たちが持っている資産をどう有効活用するかを徹底的に考えると、すべての企業が同じ方向にいくわけがない。進むべき道が変わってくるのはいいことである」とする。

パナソニック 代表取締役社長 津賀 一宏氏

パナソニックの津賀社長も、「CESには、自動車メーカーをはじめとして様々な業種の企業が出展し、スタートアップ企業の出展も増加している。CESの主催者であるCTAのゲーリー・シャピロCEOと話をしたが、業界の変化が起きており、CESもそれに伴って変化していることを強調していた」とする。

しいて言えば、津賀氏が「メインブースではB2Bやオートモーティブの展示」とあえて「オートモーティブ」と切り出したように、自動車産業への姿勢は共通している。エレクトロニクスの既存カテゴリがレッドオーシャン化する中で、新規領域をどう開拓していくのかという点で魅力的な領域がここ、ということなのだろう。

家電見本市から脱却する方向がより鮮明になったのが、今年のCES 2018。それは日本の電機メーカーの出展内容だけを見ても明確だ。各社が各社の得意分野を「テクノロジー」の観点から打ち出す展示会へと変化している。日本を代表する大手電機2社の展示は、まさにCESの多様性と広がりを象徴するものだといっていいだろう。