京都大学(京大)は、同大らの研究グループがインフルエンザウイルスが子孫ウイルスに遺伝情報を伝える仕組みを明らかにしたことを発表した。この成果は、ウイルスRNAの集合を標的とした新規抗インフルエンザ薬の開発に繋がることが期待される。

この研究成果は京都大学 ウイルス・再生医科学研究所の野田岳志教授、東京大学の河岡義裕教授らの研究グループによるもので、1月4日、英国の科学雑誌「Nature Communications」で公開された。

  • この研究で解明されたインフルエンザウイルスの遺伝の仕組み(出所:京大ニュースリリース)

    この研究で解明されたインフルエンザウイルスの遺伝の仕組み(出所:京大ニュースリリース)

あらゆる生物において、子は親からゲノムを受け継ぎ、ウイルスも同じく子孫ウイルスは親ウイルスからゲノムを受け継ぐ。インフルエンザウイルスは、8本にわかれたRNAをゲノムとして持っているが、それがどのように子孫ウイルス粒子に伝えられるか、仕組みの詳細は明らかにされていなかった。

同研究グループは以前、子孫インフルエンザウイルス粒子の中のRNAの解析を行い、子孫ウイルスが"1+7"という特徴的な配置をとった8本のRNAを取り込むことを明らかにしていた。

今回はさらに、ウイルスRNAを1本欠き7本しかRNAを持たない変異子孫ウイルスにも、"1+7"配置にまとめられた、8本のRNAが取り込まれることを明らかにした。なお、8本目のRNAとして取り込まれたのは、インフルエンザウイルスのRNAではなく、感染細胞のリボソームRNAであった。

このたびの研究で、インフルエンザウイルスが子孫ウイルスにゲノムを伝えるとき、8本のRNAを"1+7" に集合させる過程が重要であることが判明した。さらに、ウイルスのRNAが足りないときには、"1+7"配置にまとめるために、感染細胞のRNAを奪う仕組みを持つことが明らかになった。

今回、インフルエンザウイルスの遺伝に関する巧妙な仕組みを解明したことにより、今後はウイルスRNAの集合を阻害する、新規抗インフルエンザ薬の開発に繋がることが期待される。