同社はこの5年間様々な取り組みを進めてきたが、張氏が強調したのは、日本顧客の要求レベルを満たす「品質」と「パートナー」の2つだ。

品質については「日本のお客様は品質への要求が高く、それに応えるための活動に取り組んだ」と張氏。具体的には、品質を高めることに加え、製造過程を顧客に見てもらうことで信頼関係を構築したという。また、日本における品質の重要性に対する本社の理解もあった。

「製品に対して品質を要求するのは当たり前。日本の顧客の要求に応えることができれば、世界に通用する製品と認められたことになる。日本の顧客ニーズに積極的に対応することで、全体の品質が上がるという良いサイクルができている」(張氏)

本社も日本市場を「特殊な市場」と考えてはおらず、「日本の顧客の要求に近づきたい」という期待が大きいという。

パートナーについては、「ここ2~3年ほど、パートナー様のビジネスを理解して、ファーウェイの価値、ポジションを定義して、パートナー様と会話をしてビジネスをやるという活動をやってきた。結果が出始めていると感じる」と張氏は語る。パートナーの数は2桁になり、一緒にビジネスを展開するというケースが増えているという。

パートナーの顔ぶれも、ユニアデックス、ラック、日商エレクトロニクス、ダイワボウ情報システムなど多岐にわたり、昨年11月には東芝デジタルソリューションズとの提携を発表した。これは、スマートファクトリーなどIoT分野にフォーカスしたものとなる。放送分野ではソニーがファーウェイのネットワーク技術を活用しており、これらは日本だけでなくグローバルへの展開も期待できるという。

「お客様はハードウェアだけを買うのではなく、ソリューションを購入する。インフラだけでなく、さまざまなレイヤーを必要としており、ファーウェイのオープンなインフラとパートナー各社の様々なレイヤーのアプリケーションと組み合わせて、初めてソリューションとして提供できる。これにより、顧客のニーズに応えることができる」と張氏。

社の方針として、ビジネスアプリケーションの領域には拡大しないと決定しており、ファーウェイのインフラ技術の価値とパートナーの得意分野との相乗効果を図っていく狙いだ。

法人事業の事例も多数出てきている。サイバーエージェントは、「アメーバブログ」の画像用CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)のキャッシュサーバにファーウェイの高密度サーバを活用、キャッシュヒット時の遅延を従来の3分の1に短縮するなどの成果を出した。新日鉄住金ソリューションズとは、バンダイナムコビジネスアーク向けにファーウェイのコンバージドストレージシステムを用いてバンダイナムコグループのコンテンツデータのアーカイブを構築、コストとスペースの削減に成功したという。

ユニークなところでは、阪神電気鉄道が沿線の地方自治体と協力して展開する見守りサービスがある。地域ブロードバンド無線アクセス(BWA)を利用したもので、ファーウェイはプラットフォームを提供した。中でも、市全体を安全にという方針を掲げる伊丹市は、電柱などに監視カメラやセンサーを設置して子供が校門を出ると保護者に通知するなどのサービスを提供、人気を集めているという。

今後日本でも少しずつ進むとみられるスマートシティについても、先行事例が多い中国でファーウェイはノウハウや知見を積んでおり、これが生かされるとみる。