MVNOからキャリアへの転身を表明した楽天はどうなる?
そしてもう1つ、MVNO、ひいては今後の携帯電話業界の動向を占う上で大いに注目されているのが、楽天の動向である。楽天は昨年12月14日、総務省が既存の4G向けとして、新たに実施する予定の1.7GHz帯と3.4GHz帯の割り当てを申請し、キャリアとして携帯電話事業に参入することを表明したのである。
楽天はMVNOとして「楽天モバイル」を運営しており、プラスワン・マーケティングから買収した通信事業と合わせて140万を超える契約を獲得。MVNOとしては既に大手の一角を占める存在となっている。だが大手キャリアからネットワークを借りている立場上、昼間に速度が落ちやすいなど、大手キャリアと比べればネットワーク面で多くの制約がある。そうしたことからか、楽天はMVNOとして事業拡大するのではなく、自らキャリアになるという選択を打ち出したのだ。
だが回線を借りるだけでサービス提供できるMVNOと、自ら基地局の場所を借り、鉄塔などを敷設して充実したインフラを整備する必要があるキャリアとでは、全く別次元とも言うべき事業面でのハードルが待ち構えている。楽天は2025年までに最大6000億円の資金調達残高を見込んでいるが、大手キャリアは1年でその程度の金額をインフラに投資しているだけに、決して十分な額とはいえない。
それだけに、これからゼロベースでインフラを敷設し、大手キャリアに対抗し得る存在となるのは非現実的だとの見方が多数を占めている。そうした見方を覆し、明確に成功し得るプランを提示できるかどうかが、楽天には大きく問われている。
電波割り当ての申請は今年実施されると見られているだけに、楽天のキャリア化に関する動向は今年1つの山場を迎えることとなる。今後の業界全体の動向を占う上でも、楽天には大きな注目が集まることとなりそうだ。