iMac ProにTrueDepthカメラが搭載されると何が起きるのか。

まず生体認証としてFace IDが採用され、おそらくユーザーはiMac Proの前に座れば、ロックが瞬時に解除されてすぐに使える状態になるはずだ。またアプリなどでパスワード入力を求められても、Apple Payでの支払いをする際にも、何もせずに顔を認識してロック解除されることになる。

また、macOSに用意されているPhoto Boothアプリでポートレートモードの撮影に対応するほか、FaceTimeの際にも背景をぼかすことができるかもしれない。オフィスなどでビデオチャットをする際、自分以外の背景が映らなくなる機能は重宝される可能性がある。

またiMac Proでどれだけの人が試したいかは別として、メッセージアプリでAnimojiを送信することもできるだろう。加えて、TrueDepthカメラの深度データをDepthAPIとしてmacOS向けに提供するなら、アニメーション制作のアプリで喋り声と表情をキャラクターに反映できるし、DepthAPIを用いたアプリ開発での動作確認をMac上で行うこともできる。プロユースのマシンとして魅力的な機能となるのではないだろうか。

開発者は搭載されるプロセッサにA10 Fusionの名前を挙げている。もちろんアプリケーションを動作させるわけではないため、もしFace IDを実現する場合でも、1世代前のプロセッサで済む可能性もあるが、True DepthカメラとA11 Bionicの組み合わせによってFace IDを実現している点を強調してきたAppleの話と整合性が取れなくなってしまう。よって、もしFace IDを実現し、True Depthカメラを採用するなら、A11 Bionicを搭載するという流れになってくるだろう。

ちなみに、これまでSiriやTouch IDがiPhoneに初搭載され、他のラインアップに波及していった様子を見ると、Face IDも今後、iPhone以外のデバイスへ搭載が進んでいくことが期待できる。iPadにはiPhoneと同じAシリーズのプロセッサが搭載されており、ホームボタンなしのデザインはiPhoneより早く検討されてきた。またMacについても、Touch Barの有無に関係なく、Face IDによる認証の導入は可能だと考えられる。

2017年12月発売予定のiMac Proが、Macの生体認証のFace ID移行を決定的にするという展開に期待したいところだ。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura