Face IDは、iPhone Xの前面上部、センサーハウジングに収められたTrueDepthカメラシステムと、A11 Bionicによる機械学習処理によって実現する生体認証だ。ニューラルネットワークを使い、変化する顔を学習し続け、本人の顔を認証することができる仕組みを構築している。
TrueDepthカメラシステムには、700万画素のこれまでのカメラに加え、ドットプロジェクターによる3万点以上の照射と、赤外線カメラが新たに搭載された。これによって被写体の顔の輪郭や凹凸を正確に読み取ることができるようになる。
ドットプロジェクターは、人間の目には見えない波長を用いており、具体的には波長940nmの近赤外線だという。通常、眼鏡やサングラスをかけていてもFace IDの認証が行えるが、iPhone Xが利用している波長を遮ってしまうサングラスでは、目の周辺や光彩を認識できず、ロック解除ができないそうだ。
Face ID登録は、首をぐるりと2回回すセッションを2回、合計4回、首を回すだけで済む。その際、顔の深度マップを作成し、赤外線イメージも取り込む。A11 Bionicチップで深度マップと赤外線イメージを数学モデルに変換し、毎回そのモデルを照合するという仕組みだ。Face IDでは指紋認証の5万分の1の誤認識から、100万分の1の誤認識に低減できるとしている。
セキュリティを高めながら、こだわったのはミリセカンド単位のスピードだった。カメラシステムだけでなく、プロセッサや学習モデル、そしてユーザーインターフェイスデザインを連携させ、ホームボタンとTouch ID以上に快適な体験作りに努めた結果が、Face IDの誕生だった。