これまでの光学技術がそのまま使えないことで、一からの設計になったが、ライカレンズはディテール、深み、輪郭の3点がバランスよくそろった優れた光学設計。例えば、逆光時のフレアやゴーストは、意図しない場合にディテールが飛んでしまうなどの問題が発生するため、できる限り抑える必要がある。これを実現するために、ライカチームが指示した光源の強さは、ファーウェイのカメラ設計で使っていた光源の「数十倍の明るさ」だったという。
ファーウェイでは、こうしたライカの開発で使われる厳しい評価基準と同じものを、スマートフォンカメラにも導入することを決意して開発を継続した。
こうした高い水準の品質を保ちながら、スマートフォンカメラに導入できるレベルで量産化するのは困難を極め、当初は100個中10個以下の歩留まりでしか生産できなかったそうだ。この時点でファーウェイは光学技術のスペシャリストを集め、ライカチームとともに「日夜を問わずにハードウェアの量産化のめどが立つまで頑張った」という。
高品質に加えて、「ライカらしさ」の再現も困難だったそうだ。従来のファーウェイでは、色を再現、評価するためのカラーチップが数十個だったが、ライカの基準では140個に達し、「部品からアルゴリズムまで再設計が必要だった」(ファーウェイ談)。
画像の審査項目も多く、客観評価に加えて主観評価もあり、主観評価のためには100種類におよぶ指定シーンの撮影が必要だった。画像調査チームを集めて試作機を使い、世界中で撮影を行い、分析には数カ月が必要だったそうだ。
開発を続けた結果、ようやくHUAWEI P9の発表にこぎつけたのが2016年4月。その2カ月前まで、お互いが納得できるような写真が撮影できていなかったそうで、2カ月で解消したのだという。
1つの大きなポイントが、デュアルカメラの採用だろう。スマートフォンのデュアルカメラは、ワイドとテレという2つのカメラを搭載することが多いのだが、ファーウェイではモノクロセンサーとRGBセンサーという2つのセンサー画像を合成する手法を選択。「鉛筆で描いた絵に絵の具を塗るような手法」(ファーウェイ談)。
モノクロセンサーは解像度が高く、光を多く取り込めるという特徴を生かして、より解像力が高く、明るい写真を撮れるようにした。ライカの色合いを実現するために、スタンダードモードに加えて淡い色合いの「スムーズ」、色がはっきりとした「ビビッド」を用意して、ライカのフィルムを再現するようにしたのも特徴だ。
2つのレンズを搭載することで、視差を利用した美しいボケを実現し、さらに約190ポイントで人間の顔を認識する3D顔面認識機能を使って、陰影をより美しく表現することも実現した。モノクロセンサーを使ったモノクロ写真の美しさもポイントだろう。
P9以降、HUAWEI Mate 9、HUAWEI P10と協業を継続。P10では従来のSUMMARITレンズに加えてSUMMILUXレンズを採用。レンズ銘に「H」が付く通り、ファーウェイ専用設計だ。基本的には従来のライカレンズ同様、明るさによってレンズ銘が変わる仕組みだが、恐らく、デュアルカメラの特性も考慮したレンズ銘になっているのだろう。
こうして、優れた画質のスマートフォンカメラを実現したファーウェイ。11月28日には「次世代スマートフォンを発表する」としており、10月にグローバルで発表された「HUAWEI Mate 10」の国内発表と見られる。ライカとの協業による新たなスマートフォンのカメラ性能に注目したい。