Sneaksで紹介された11のテクノロジーは、おそらくAdobe社内で研究されているものの一部であり、アプリの機能として追加するもの、クラウド上での活用を想定しているものなど、さまざまだ。また、聴衆の受け取り方もまちまちである。どの機能を使ってみたいか、意見が分かれるところだ。

筆者は個人的には、データビジュアライズを行うProject Lincolnに惹かれた。数時間は軽くかかるようなインフォグラフィックの企画とレイアウト、デザイン要素の設計、データの適用といった作業を、非常に効率的かつ瞬時に行える仕組みだ。

Adobeはユーザー体験デザインを行う為のツール、Adobe XDを今年のAdobe Maxで正式版としてリリースした。このツールは単に画面デザインを作るだけでなく、全体の設計や整合性の確保、デザインを検討するためのコミュニケーションの機能に至るまでを実装している。コミュニケーションのためのデザインツールというコンセプトを前面に押し出すとき、Adobe XDのノウハウがデータビジュアライズのアプリに転用されることは、自然に思える。

また、筆者のTwitterで、Sneakのプレゼンを投稿していたところ、最も大きな反響があったのは、領域を選択したシェイプで埋め尽くすデザインを作成するPhysicsPakだった。返信やリツイートをしたユーザーの中には、「面倒くさくて取り組まなかったデザインが一瞬でできあがる」という意見があり、やりたいけれど時間がかかり過ぎる作業であったことをうかがわせる。

イメージと手間が一致しなかった作品の「手間」の部分をAdobe Senseiによって解決し、クリエイターの表現を制限から解放する、そんなAdobeの人工知能への取り組みが、実際のクリエイターにダイレクトに響いている様子を目の当たりにしたようだった。

Creative Cloud製品は、各アプリとも、随時アップデートされていく。年次イベントであるAdobe Maxを待たずに、新機能が実装されていくことも多いので、今回反響が大きかった機能が利用できるようになる日は意外と近いのではないだろうか。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura