スマートフォンの通信代は誰もが頭を悩ますもの。外出中はカフェなどの無料Wi-Fiを使って少しでも通信費を節約している人もいるだろう。しかし無料Wi-Fiは速度が遅かったり使える場所が限られていることが多い。

ところがニューヨークのマンハッタンには、完全無料で超高速なWi-Fiホットスポットが街のあちこちに設営されているのだ。もちろん海外からの旅行者もすぐに使うことができる。動画のストリーミングも快適に視聴できるなど、無料とは思えぬ最高品質のサービスが提供されているとは驚きだろう。

マンハッタンで数が増えてきたLinkNYCキオスク

このサービスの名前は「LinkNYC」。現在はマンハッタンを中心に急ピッチで設置が進められている。実際にどんなサービスなのか、まずは以下の動画で見てみよう。

超高速Wi-Fiホットスポット「LinkNYC」

LinkNYCは携帯電話の普及で使われなくなった公衆電話ボックスを有効的に置き換えることを目的に考え出された。ニューヨーク市の情報技術通信局と、クアルコムなどが参加するコンソーシアム「CityBridge」が運営を行っている。最終的にはニューヨーク市内に約1万台のキオスクが設置される予定である。

マンハッタンの街中を歩いてみると、通り沿いにずらりと並ぶLinkNYCのキオスクを見つけることができる。大型のディスプレイは広告やお知らせ、天気予報が流れるデジタルサイネージとなっているが、これこそがLinkNYCの大きな特徴なのである。通常、この手の無料サービスは何らかの税金が使われることが多い。しかしLinkNYCはその運営費をデジタルサイネージで表示する広告でカバーしようとしているのである。ニューヨーク市が計画に加わっているものの、税金を投入することなく高速な通信インフラを市内に張り巡らせようとしているのだ。

デジタルサイネージとして広告を掲載。広告費で運営をまかなっている

LinkNYCで最も有用な機能は無料のホットスポット。数百Mbpsに対応する速度は、スマートフォンで使われるLTE回線と変わらないかそれ以上だ。よくある一般的な無料ホットスポットはせいぜい数Mbps程度の速度のものが多い中、LinkNYCなら高画質な映画のダウンロードも短時間で終わらせることができる。電波は最大150フィート(約45メートル)まで飛んでいるので、キオスクが目視できない場所でも利用できるケースもある。

実際に筆者はニューヨーク出張中、数百メガバイトのデータをメール送信したことがある。ホテルではなかなか送れず途中でタイムアウトによる接続エラーが起きてしまったが、LinkNYCを使ったところ数分もかからずに送信することができた。

中にはカフェやスタバのそばにLinkNYCのキオスクが設置されていることもある。そのようなときはお店の無料Wi-Fiを使うより、LinkNYCを使ったほうがはるかに高速で快適だ。実際にそんなお店に行くと、ノートPCを前に仕事に精を出すニューヨーカーの姿を目にすることも多い。また休憩がてらキオスクのそばに集まって雑談する人の姿も多い。LinkNYCはいまやニューヨークの街中にすっかり溶け込んだ存在となっている。

スタバの目の前にLinkNYCのキオスク。店内のWi-Fiよりはるかに快適だ

またキオスクにはタブレット型端末も内蔵されているので、ちょっとした調べ物などもできる。もっともそれは自分のスマートフォンを使ったほうが楽にできるだろう。それよりも有用なのはUSBの充電端子が備わっていることだ。スマートフォンのバッテリーが切れそうになっても、手持ちのUSBケーブルを使って自分のスマートフォンを充電できるのである。

USB端子もあるのでスマホの充電もできる。実際に使っている利用者も多い

設置場所はまだそれほど多くは無いものの、道路ごとに集中して設定されており、交差点と交差点の間に複数のキオスクが立ち並んでいることもある。そのような場所ならばスマートフォンのデータ通信をOFFにしていても、無料Wi-Fiだけで十分快適にネットアクセスすることが可能だ。筆者はニューヨークを訪問するとき、LinkNYCのWEBページで設置場所を確認し、付近にキオスクがあるホテルを予約するようにしている。万が一ホテルのネットが遅くとも、いざという時にLinkNYCを使えれば仕事に支障が生じることも無いからだ。

タブレットも内蔵。市内通話も無料でできる

高速な無料Wi-Fiが自由に使えるようになれば、スマートフォンの活用方法も大きく広がるだろう。また海外からの訪問客にとってもローミング代を気にせず自在にネットアクセスできるメリットは大きい。日本でも駅などに訪日客向けの無料Wi-Fiが増えてきた。2020年の東京オリンピックに向け、駅の次は街中にも無料Wi-Fiが欲しいところ。日本でもLinkNYCのようなサービスをぜひ提供して欲しいものである。