自社デバイスに一貫するテーマとは

グーグルが自社製品を拡充する背景には、2つの事情がある。

1つは、Androidスマートフォンを中心とした製造メーカーの疲弊だ。現在のグーグルのソフトウェアを活用したデバイスはAndroidスマートフォンが中心だが、アップルと比較すると収益性が低く、また販売の中心は中国からインドをはじめとするアジア諸国、アフリカへと拡がりを見せている。中国メーカーが中心で、米国、日本を含む先進国メーカーは撤退もしくは事業売却が既に一段落ついた状況にある。

つまり、廉価版の製品が中心となっており、グーグルがアップルと競争したいハイエンド領域に食いついてきてくれる存在はサムスンぐらいしかいなくなってしまったのが現状だ。

またスマートフォンをきっかけにして、スマートウォッチ、スマートホームへとライフスタイルを構成するデバイスとプラットホームへ展開していく場合、ハイエンドスマートフォンを利用するユーザーのグーグル離れを食い止めていかなければ、その他の領域での競争が難しくなっていく。

そのため、Pixelシリーズで、先進国ユーザーをきちんと取り込み、Google Homeなどのスマートホーム製品などを通じて、グーグルプラットホームで生活する人を確保したいという考えだ。

もう1つの理由は、垂直統合の実現だ。

グーグルはこれまで、ハードウェアには取り組まず、OS、クラウドを中心としたソフトウェアサービスをカバーし、広告ビジネスを展開してきた。しかし前述の理由から、ハイエンドのハードウェアの競争状態を確保する必要があり、Pixelシリーズへの本格的な取り組みを強めている。

9月20日には、グーグルがHTCのハードウェア部門を買収するというニュースが流れた。2000人あまりの従業員もグーグルへ移籍し、Pixelシリーズをはじめとするデバイスの開発に取り組むことになる。

グーグルはイベントの中で、コンピューティングの進化は「AI + ハードウェア + ソフトウェア」の組み合わせであることを強調している。アップルも確かにAIへの取り組みを強めており、最新のA11 Bionicプロセッサは機械学習処理を高速化する仕組みを持っている。

しかし実際に機械学習を生かすのはアップルではなく、iPhoneとiOS 11の組み合わせを利用するアプリ開発者である。そのため、機械学習に強いiPhone 8が登場しても、対応するアプリが揃わなければ、その魅力を発揮することができないのだ。