――社長就任会見では、VAIOは「標準体重」になったという表現をしていましたが、これはどういう意味なのでしょうか。

吉田氏:実は、これがどうも誤解して受け取られてしまったようです。VAIOは、これからもっとスリムになるのですか、という質問をずいぶん受けたのです。この質問を聞いて、「あっ、誤解を与えてしまったな」と。

VAIOの社長就任会見で登壇する吉田氏。この時、今VAIOは標準体重になり、これから筋肉体質にしていくという発言があった

――私も、ダイエットして標準体重になり、これからさらに絞るというように言葉の意味を受け取りましたが。

吉田氏:いや、違うんです。いまのVAIOはスリムすぎるんです。VAIOは独立してから、絞って、絞って、絞りまくったわけです。食べる量が少なく、結果として痩せすぎになってしまった。だから、もっと食べなくてはいけない。そして、食べて、鍛えないといけない。ダイエットが必要な人が標準体重になったのではなくて、痩せすぎていた人がようやく標準体重に戻ってきたわけです。

ただ、これは悪いことではなく、PC事業をやるには徹底的に絞り込む必要がある。PC事業は大きいままでいると、無理なダイエットが必要になり、これが追いつかないと業績を一気に悪化させることにつながります。いまのVAIOは、この点では心配がありません。その上で、少しずつ食べ始めて、ようやく標準体重まで来た。それをもっと鍛えて、筋肉質な体質にしていかなくてはいけないという意味だったんです。

――つまり、「痩せマッチョ」を目指すと(笑)。

吉田氏:そうですね(笑)、バランスをしっかりと取りながら、筋肉質にしてきたいですね。収益がわずかに出たということで満足していてはいけまくせんし、売上げをもっとあげていく必要があります。固定費が少ない体質になっていますから、売上げを高めれば収益が出やすいともいえます。ここで出た収益を、今度は投資に向けることができます。これをうまく循環させていけば、筋肉質な体質になると考えています。

PC市場は下り坂だという人が多いのですが、ここまで絞り込んだVAIOにとっては、これからは上り道ですよ。HPやデルといった企業と戦うつもりはまったくありませんし、自分の領域を探して、その領域のなかでしっかりとやっていきます。背丈が高い会社ではありませんから、その背丈のなかで、痩せすぎず、太りすぎず、そして、あまりにマッチョすぎても問題がありますから、それもそこそこにという感じでしょうか(笑)。

社長就任会見で掲げられたVAIOの今後の方針。VAIOのブランド価値を上げることを目標に、「中国進出」や「第三のコア事業」など4つの施策が発表された

――2017年5月期決算は、売上高が188億6900万円、営業利益は5億8500万円、経常利益は5億7300万円、当期純利益は1億8500万円という結果でしたね。これは固定費が少ない点がプラスに働いたのですか。

吉田氏:確かに固定費はかなり絞り込んでいますが、営業利益率はもっと高める必要がありますし、それを継続的に維持することも必要です。その点では、まだまだ満足できる業績ではありません。ただ、VAIOには、尖ったものをやりたがる体質があって、それをこれまで封印してきたところがあります。しっかりと利益を確保した上で、次のステップに入っていけるところが少し見え始めてきたともいえます。

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――いまのVAIOに足りないものはなんですか。

吉田氏:やはり、本格的に事業を拡大するときに、リソースが足りないということを感じます。特に、いまはEMS事業にもリソースを分散し、第三のコア事業の創出にも取り組もうとしていますから、ここでもリソースが分散することになります。それぞれが伸びようとするときに、それぞれにリソースが足りないというのが現状です。

しかし、だからといって、人を簡単に増やすことができないというのも確かです。これを解決するために人を増やすと、バランスが崩れることになります。EMS事業も、手がけているものの倍以上の商談をいただいているのですが、リソースの関係から、どうしてもすべてにお応えすることができないのが現状です。海外の企業からも商談をいただきますが、これもリソースの関係で、いまのところ、日本の企業とだけお仕事をさせていただいています。

EMS事業は、単にモノを作ってお渡しすればいいというビジネスは考えていません。身近にいてお話をしながら、お客様がやりたいことを、モノづくりの観点からご支援するという体制をとっています。ですから、いまは日本の企業と事業を進めるのがリソースや立地の観点からも最適です。いずれにしろ、もうしばらくはバランスを重視する経営が必要です。

VAIOのEMS事業ではロボットを始めとしたさまざまなプロダクトが生産されている