別会場でやるのもムリ

もうひとつ、東京ビッグサイトが無理なら、幕張メッセで開催すればいいのでは? といった疑問も出そうだ。しかし、この考えにも無理があるという。幕張メッセは五輪の競技会場となるため使用制限がかかるからだ。

それ以前の問題として、どこもスケジュールが過密化しており、東京ビッグサイトや幕張メッセなどに並ぶ展示会場の必要性が高いというのが業界関係者の見方だ。現時点でも、ある展示会が終わったら、即翌年の会場予約をしているような状況。新たなイベントが割って入る余地は少ないとする。

展示会場はどうやらパンパンのようだ。諸外国と比較しても圧倒的に足りないと、吉田氏も指摘する。「日本の展示会場総面積が35万平米、これはアメリカの20分の1、中国の15分の1、日本と国土面積がほぼ同じドイツの10分の1と慢性的に不足している」(吉田氏)。

まとめれば、日本は展示スペースが圧倒的に不足している状態だ。五輪開催によって、それがさらに縮小されようとしているわけだ。

日展協の要望とコンパクト五輪

こうした状況を打開すべく展示会産業の団体 日本展示会協会(以下、日展協)などが動いている。日展協は100を超える団体の賛同を得ながら、問題の解決を試みている。

その日展協が求めるのは、「ビッグサイトと同規模の仮設会場を首都圏へ建設すること」、もしくは「メディアセンターのビッグサイト以外への建設」だ。

この要望は根本的な解決案となるが、コンパクトでコストをかけない祭典を目指す東京五輪という考えにはマッチしそうにない。

しかしながら、ビッグサイトのメディアセンター化や五輪終了後の現状回復に要する費用、仮設展示場の建設費をはじめ、展示会の開催不可により生じる膨大な経済損失を考慮すると、大きなメリットがあると訴えているのだ。

日展協はこうした要望を過去に何度も出しているものの、事態はそれほど好転していない。9月末に東京都が発表した対策も、緩和策に過ぎなかった。ビッグサイトの4分の1の面積にとどまる仮設展示場の使用制限の一部緩和(2020年7月と9月に計35日間貸し出す)、様々な工夫により展示会場を提供する考えがあることを示した程度だったからだ。

両者にはまだ大きな隔たりがあるのが現状だ。ゆっくりと時間をかけて解決、といきたいところだが、実はタイムリミットが目前に迫っている。ビッグサイトの利用制限がかかるのは、2019年4月からとまだ先だが、会場の一年前予約を考慮すると、直接的な影響を受けるのは2018年4月開催の展示会から。抜本的解決を図るなら、2018年3月末までがタイムリミットとなる。

先にも述べたように、展示会産業に直接的に関わる人だけではなく、数多くの人・企業を巻き込むリスクがある切迫した問題となる。タイムリミットまでにひとりでも多く納得できる解決に近づけるだろうか。