東京都市大学は9月27日、同工学部機械工学科 岸本喜直講師らの研究グループが、締め付けたボルト・ナットをハンマーなどで叩いた際に生じる振動速度をコンピュータ上で予測するシミュレーション技術を開発したと発表した。

機械の設計・開発において、工具を正確に利用するためには剛性の把握が必須となる。従来の設計・開発では、実験から得られた剛性などのデータベースから個々のデータを利用するのが一般的だが、新たな機械を設計する際、データベースにない剛性の予測・評価には適用できず、またボルトの締結やゆるみなどによる剛性の変化についても、一般的かつ定量的な予測・評価法は確立されていなかった。

今回、同研究グループは、ボルト・ナットを使ったつなぎ目における微小な凹凸が及ぼす剛性と応力分布への影響を数理的に見積もる力学モデルを開発。同モデルに基づき、機械の剛性と応力状態を演繹的に計算するマルチスケール・シミュレータを開発した。さらに、同マルチスケール・シミュレータをデータ同化技術と組み合わせることで、機械全体の剛性、つなぎ目の微小な凹凸、つなぎ目の応力分布の三者を関連付けることに成功した。

データ同化シミュレーションの概略 (出所:東京都市大学Webサイト)

2枚の板を8本のボルトで締結した試験片を用意した打撃試験では、試験片に生じた振動はシミュレーションで予測されたものと合致し、つなぎ目表面の粗さが違う試験片に対しても、実測とシミュレーションの数値が合致していたという。また、開発したシミュレーションソフトは実際の振動の速度をよく捉えることができ、ボルトの締め付け力が設定された際の剛性の高さを推定できるようになった。

同研究グループは今後、今回の成果をもとに、現場の技術者が設計・管理に利用できるシミュレーションソフトウェアを開発し、5年以内の実用化を目指していくとしている。