2017年8月、日本のワイン造りが140周年を迎えたとメルシャンがアナウンスした。140周年が長いか短いかはひとまず置いておくとして、“区切り”を迎えたことは確かだ。そのメルシャンが山梨県の拠点である「シャトー・メルシャン」へメディアツアーを開催した。
140年前といえば、1877年(明治10年)。その年にはどのような出来事があったのだろうか。もっとも有名なのは西南戦争が勃発したことだろう。そのほか、日本初の高等教育機関として東京大学が設立されたり、学習院が誕生したりと、政治、文化が激動した年だ。海外ではトーマス・エジソンが蓄音機の発明に成功している。
この年に「大日本山梨葡萄酒会社」が設立され、土屋龍憲と髙野正誠がフランスに派遣された。彼らはワインの本場フランスで、苗木づくりや醸造、貯蔵の技術などについて学び、1879年に帰国。この大日本山梨葡萄酒会社が、メルシャンの前身となる。完全なこじつけだが、最後の士族の赤い血が多く流れたこの年に、赤い色のお酒を造る会社が生まれたのかと、感傷に浸ってしまった。
仕込みはじめを神事で祈り
メディアツアーに話を戻そう。招待されたのは、山梨県・甲州市にあるシャトー・メルシャン。メルシャンがワイン造りの“旗艦”とするワイナリーで、日本産ワインの象徴的な存在にもなっている。工場の規模もワイン生産量も、神奈川県にあるメルシャン藤沢工場に遠くおよばないが、こちらは安価なデイリーワインをメインに造る拠点。日本産ブドウから品質の高いワインを生み出すシャトー・メルシャンは、手がけるブランドからしても、歴史の面からも同社のフラッグシップといってまちがいない。
そのシャトー・メルシャンに案内されて、最初に面白い光景を拝見した。実はこのメディアツアーが行われた日、今年に収穫されたブドウを使った“初の仕込み”だったらしく、厳かに神事が行われていた。宮司が神棚に向かって儀式を行い、今年のワイン造りの安全や仕上がりを祈っていく。少し「クスッ」となったのは、神棚にお供えになった“御神酒”がワインだったこと。御神酒は日本酒というイメージで凝り固まっていたが、ワイナリーでの神事だ。ワインのほうがシックリくるというものだろう。