大阪大学(阪大)は、新生児にみられる腎臓の難病「常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎(ARPKD)」における、嚢胞(のうほう)形成、高血圧、肝繊維化の病態を統一的に説明するメカニズムを明らかにしたと発表した。

同成果は、同大大学院医学系研究科の貝森淳哉 寄附講座准教授(先端移植基盤医療学)、猪阪善隆 教授(腎臓内科学)らによるもの。詳細は、英国科学誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載された。

PD1をコードする遺伝子に異常が起こると、ユビキチンリガーゼを制御するNDFIP2がユビキチンリガーゼを正常に輸送出来なくなり、結果的に嚢胞形成、高血圧、肝臓繊維化の病態が引き起こされる (出所:大阪大学Webサイト)

常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)は成人に発症する遺伝性疾患で、腎臓や肝臓に嚢胞が形成される。一方のARPKDは新生児に見られる病気で、腎臓に嚢胞形成が見られる他、さらに本体性高血圧、肝臓の繊維化を伴うなどARPKDとADPKDは、同じような病気であるのに、出現する病態がなぜこのように異なるのかは、これまで不明であった。

今回、同研究グループでは、モデル動物や患者の組織を用いて、ARPKDの原因遺伝子からできるタンパク質分子(PD1)を含む小胞体を詳細に分析した。その過程で、多くのユビキチンリガーゼ(SMURF1, SMURF2, NEDD4-2)を制御する分子NDFIP2がPD1と同じ小胞体に存在し、PD1をコードする遺伝子に異常が起こるとNDFIP2によるユビキチンリガーゼの制御ができなくなり、ユビキチンリガーゼを正常に輸送出来なくなることを発見した。

これにより、細胞骨格を制御する分子(RhoA)、腎尿細管で塩分の再吸収を行う分子(ENac)、細胞に繊維質を作らせる分子(TGF-β受容体)を正常に消去することが出来なくなり、嚢胞形成のような細胞骨格の異常、塩分過剰な蓄積による高血圧、肝臓の繊維化を引き起こすと考えられる。

同研究グループは、同成果により、ARPKDの特徴的な病態である腎臓嚢胞形成、本体性(原因不明の)高血圧、肝臓の繊維化が統一的に説明出来ることになり、今まで治療法の無かった新生児の腎臓難病に対する治療法の確立が期待されると説明している。