こんにちは! 広告写真家の熊谷直夫です。空が赤くなる夕方は、昼間とは違った雰囲気で風景を撮影できるシャッターチャンスです。味わい深い夕焼け写真を撮るにはどうすればいいのか。実写を見ながら、夕景撮影のコツを解説しましょう。

ホワイトバランスは「太陽光」が基本

絞り:F4 シャッター速度:1/40秒 感度:ISO320 WB:太陽光 焦点距離:30mm

夕景を確実に撮るためには、まず太陽が沈む時間と方角を知ることが欠かせません。Web検索や天気予報アプリなどを使って、撮影地の日の入り時刻と方角を調べておきましょう。そして、日の入りの1時間前には現場に到着し、撮影の準備を始めたいところです。

カメラの設定は、夕景撮影ではホワイトバランスを「太陽光」にセットすることが基本です。「オート」のままではせっかくの赤みが補正されて薄くなってしまうことがあります。より赤みを強調したいときは「曇天」や「日陰」を選ぶのもアリですが、あまり赤が強すぎるとウソっぽく感じるので注意してください。

撮影モードは、構図を変えながらたくさんの枚数を素早く撮るなら、絞り優先オートが便利です。オートの設定値が明るすぎて、太陽の輪郭が白トビする場合には、適宜マイナスの露出補正を加えます。下の写真は、ニューカレドニアの夕日です。マイナス1の露出補正を加えることで白トビを抑えつつ全体に重厚感を与えています。

絞り:F8 シャッター速度:1/1000秒 感度:ISO200 WB:太陽光 焦点距離:70mm

鮮やかな夕焼けを撮るためには、西側の空ができる限り地平線近くまで見渡せる場所が狙い目といえます。自然風景なら西側に海や湖、丘、草原がある場所、都会なら西側が見える展望台などです。世界各地にある夕日の名所を事前に調べ、そこを訪れるのもいいでしょう。

下の写真は、かつてニューカレドニアにあった夕日の名所です。残念ながら現在は閉鎖されてしまいましたが、このときは美しい夕日のグラデーションを撮影できました。ホワイトバランスをあえて「蛍光灯」にすることで全体を紫色に染め、別世界を思わせる夢幻的な雰囲気を高めてみました。まさに「天国に一番近い島」です。

絞り:F5.6 シャッター速度:1/125秒 感度:ISO1600 WB:蛍光灯 焦点距離:100mm

また、夕焼けの撮影は西側の空を狙うことが基本ですが、ときには後ろを振り返って東側を眺めてみるのもいいでしょう。東の空は青さが残ることが多く、鮮やかさという点では西の空に見劣りしますが、夕日そのものではなく、夕日を浴びて赤く染まった被写体があることも。下の写真では、雲がオレンジ色に輝いている印象的な光景を捉えました。

絞り:F5.6 シャッター速度:1/250秒 感度:ISO200 WB:太陽光 焦点距離:85mm

日没後のマジックアワーに撮る

空の色は時間を経るごとに徐々に変化していきます。特に日没前後の約30分は色の変化が大きく、薄い黄色からオレンジ、赤、紫といった具合にさまざまな色彩を楽しむことができます。この時間帯を逃さず、構図や露出を変えながら、たくさんのバリエーションを撮っておくといいでしょう。

絞り:F5.6 シャッター速度:1/500秒 感度:ISO200 WB:太陽光 焦点距離:300mm

絞り:F5.6 シャッター速度:1/125秒 感度:ISO200 WB:太陽光 焦点距離:100mm

そして、太陽が沈んだからといって撮影を終わりにしてはいけません。日の入り後もしばらくの間は、大気中の塵によって光が拡散され、うっすらとした明かりが残ります。この「薄明」の時間は、マジックアワーやマジックタイムとも呼ばれる絶好のシャッターチャンスです。

絞り:F5.6 シャッター速度:1/4秒 感度:ISO800 WB:オート 焦点距離:100mm

絞り:F3.5 シャッター速度:1/30秒 感度:ISO3200 WB:オート 焦点距離:27mm