ARMはソフトバンクグループの羅針盤になる

ソフトバンクグループの代表取締役社長である孫正義氏のこれまでの発言などを振り返ると、ARMの買収が、ソフトバンクグループの将来に欠かせない存在であることが見えてくる。

孫氏はARMの買収に際して「10年来ずっと考えてきた案件」だったと話し、40年前にマイクロコンピューターチップの拡大写真を見た時、感動したというエピソードを話している。それだけARMの買収、ひいてはCPUの設計に自ら関わることが、孫氏にとって悲願だったようだ。

また孫氏はここ数年来、「シンギュラリティ」という言葉を口にするようになった。これはコンピューター、ひいては人工知能が人間の知能を超えることを指すが、孫氏はシンギュラリティを迎え“超知性”が誕生することで、高い知性を備えたスマートロボットが台頭するなど、人々の生活や産業のあり方は大きく変わると話している。

孫氏はシンギュラリティを迎えることで"超知性"が生まれ、それによって人々の生活が大きく変わると考えている

それだけに、ソフトバンクグループがCPUのコア技術を持つARMを傘下に収めることは、コンピューターの頭脳であるCPUのトレンドを知り、シンギュラリティの到来を知るだけでなく、それを踏まえた上で事業の方向性を決められるようになったと見ることができるだろう。ARMはソフトバンクグループの将来を導く“羅針盤”となる可能性が高いからこそ、巨額の資金を投じて買収するに至ったといえるのではないだろうか。

そしてARMを得たソフトバンクグループは、ARMから得た知見を基にしながら、設立したばかりの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を活用し、将来を見越して必要な技術を持つ企業に投資する狙いがあるものと考えられる。ARMの持つ資産や価値をどこまで生かせるかが、ソフトバンクグループの将来に非常に大きく影響してくるといえそうだ。