剛力彩芽さん(左から2人目)や千原ジュニアさん(右から2人目)がオリジナル番組に登場する

実際に筆者が利用していても、例えばVideoなどはハリウッド大作映画が多くラインナップされ、ボリュームこそNetflixやHulu、dビデオなどの競合サービスに劣るものの、「007」などの独占配信もあり、確かに「価値」がそこに存在する。また、この日は剛力彩芽さんが主演するオリジナルドラマ「フェイス - サイバー犯罪特捜班 -」や、千原ジュニアさんのオリジナルバラエティ番組「千原◯ニアの◯◯-1GP」の制作発表も行われた。

近年は配信サービスを手がける各社が独自番組制作にも注力しており、テレビCMなどでも盛んに独自コンテンツをアピールしている。例えばNetflixが2016年に手掛けた又吉直樹さんの初小説「火花」のドラマ化は大きな話題を呼んだ。

広告モデルに頼らない独自収益があるがゆえに、スポンサーの意向などを汲むことなく番組制作に注力できる上、会見で千原ジュニアさんが「(地上波放送ではないから)規制とかなく面白いことをやれる」と語ったように、クリエイターが自由な映像制作に注力できる環境が整っているため、今後もこの勢いは増すものとみられる。

2016年の売上高は1兆円超、これを原資に投資は続くか

ただ、前述のようにプライム会員の年間課金額は3900円、月額でも400円の合計4800円と、単独サービスとして見てもかなりの低課金額だ。Amazonは詳細な収益構造を公表しておらず、例えば今回のプライムデーの売上目標について記者から問われても「Amazonのお客さまにショッピングを楽しんでもらえるような目標が大切だと考えている」(チャン氏)と回答をはぐらかす。

米Amazonが公開した2016年のAnnual Reportによると、日本法人の売上高は107億9700万ドルで、2016年年末の為替レート(115円)で計算すればおよそ1兆2400億円となる。収益面に不安はなく、今後もしばらくはPrimeサービスへの投資や、会員獲得を目指した動きが続くものとみられる。

特に、このプライムデーは大規模セールで注目を集めつつ、無料お試し期間を提供し大幅な会員増加を狙う。実際に、2015年から2016年のプライムデー売上高は、「全世界で50%~60%程度の伸びを見せた」(チャン氏)とのことで、今回も同等の売上増を見込んでいるとみられる。

1台限りの販売を行うメルセデス・ベンツ

この日の記者会見は、東京・六本木にあるメルセデス・ベンツの車を売らないショールーム「ベンツ・コネクション」で開催し、同時にポップアップストアをプライムデーの期間限定でオープンした。目玉商品の一つとして「Mercedes-AMG E 63 S 4MATIC+」をプライムデーで1台販売し、同ショールームには店員を呼び出す特製Amazon Dash Buttonを設置している。

プレミアムサービスと高級志向な商品の相乗効果を狙うのは、先日発表された米Amazonによる高級スーパー「Whole Foods Market」の買収とまったくの無関係ではないだろう。日本では小売店舗の動きを見せていないが、プライムデーの開催に合わせたポップアップストアの開設を新たな動きと捉えるのは早計だろうか。